研究課題/領域番号 |
16K04712
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研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
秋保 惠子 東京純心大学, 現代文化学部, 講師 (60712073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 物語創作の言語活動 / 授業研究 / 奥野庄太郎 / 大正新教育期 / 綴方教育 / 小学校国語科 / 「書くこと」の指導 |
研究実績の概要 |
本研究の発案時の目的は以下の2点であった。(1)現行(発案時の現行=平成10年改訂版)の『小学校学習指導要領』「国語」の内容において初めて明示された「想像したこと」や「物語」を「書く」という物語創作の言語活動(以下〈物語創作の言語活動〉と記す)が、授業場面で児童の「思考力や想像力及び言語感覚」の育成に寄与する指導法の理論と実践を提示する。(2)大正新教育期の小学校訓導等によって展開されていた国語科の実践や理論に見られる物語創作の指導について、国語科教育史や教育思想史の角度から検討し、物語創作の指導が現代において行われる背景およびその意義と課題を明らかにする。 当該年度(平成29年度)には『小学校学習指導要領』が改訂され、「国語」の内容における「想像したこと」や「物語」を「書く」活動も引き続き記された。そのため、本研究の目的を継続することに現代的な意義があると考えられる。しかし、新『小学校学習指導要領』を詳細に検討すると「物語」を明記している学年に変化が見られるなど、指導要領の改定期に進行中の本研究にとっては新たな研究的観点も生まれている。今後これらの観点も視野に入れつつ、発展的に研究を進めたいと考える。 当該年度は、冒頭に記した目的達成のために予定していた3課題の内、小学校における〈物語創作の言語活動〉の授業研究の実施が中心課題となった。東京都内の公立小学校の主任教諭に研究協力者になっていただき、1年生の第3学期に8時間扱いの〈物語創作の言語活動〉授業研究及び授業を実施した。研究代表者の大学の倫理委員会審査を経た後、研究協力者との二人三脚の授業実践を行うことができた。本授業研究は、〈物語創作の言語活動〉研究である一方で、現職の小学校教諭の方々と大学教員との新たな研究スタイルの提示という性格も持ち合わせており、今後極めたい研究手法であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には研究協力者の決定に関してやや遅れていたが、当該年度においては、研究協力者との授業研究会及び授業も実施することができたため。時期が学年末の実践だったため、授業記録の整理や授業の評価や総括は次年度に引き続き行うことになる。今回得たデータを基に授業研究会を重ね、次の実践的研究を積み重ねたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3課題から推進する方法を採ってきた。第1に現代における〈物語創作の言語活動〉の理論と実践の研究、第2に大正新教育期の創作的・芸術的綴り方教育の研究、第3に小学校における〈物語創作の言語活動〉の授業研究である。 初年度に推進した第1、第2の課題は文献研究が中心であった。当該年度には、研究協力者を得て小学校において授業研究を行うことができたため、理論と実際の関係にも目を向けながら研究を推進する糸口が見つかったと言える。 今後は、この授業研究記録を分析し、現代の学校教育において〈物語創作の言語活動〉が果たすことが可能な今日的役割と課題を提示する。小学校教諭の方々との協働も続け、新たな授業研究にも着手する。また、実践的な研究を経た現在、同言語活動の根源的な意義も明らかにすべく更に文献研究も進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度途中に図書費に関して不足が生じる可能性がでてきたため、前倒し支払い請求を行った。前倒し支払い請求をして順調に活用した結果、実際に使用した額がそれを下回った。次年度の使用可能額が、当初の最終年度使用予定額に戻る形になるため、図書費、人件費等に充てる。
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