本研究は、平成20年度改訂の『小学校学習指導要領』「国語」の内容において初めて明示された「想像したこと」や「物語」を「書く」言語活動(以下〈物語創作の言語活動〉と記す)が、授業場面でどのように児童の「思考力や想像力及び言語感覚」の育成に寄与することができるのか、実践を通してその指導法の理論を追究することを第一の目的としていた。このような実践研究の性格ゆえ、協働できる教諭を開拓し、また研究倫理的な条件を満たした上で研究を進めなくてはならないという手続き上の課題もあり、当初の計画よりは研究全体の時間を要した。 上記のような経過の中で、2年目の年度末には小学校において〈物語創作の言語活動〉の実践(単元名「「かくこと」ってたのしいな。「そうぞう力」をつかって、ものがたりをつくろう」、対象1年生)を行うことができ、最終年度には、授業者としてご協力いただいた公立小学校の主任教諭との省察的協議会も行うことができた。本研究は、一義的には、当該校の児童への貢献としての成果を得ることができたと考える。すなわち、既成の話の続き話や一枚絵などを頼りに創作するのではない物語創作、いわば〈ゼロから出発する物語創作〉の楽しさの感受を「授業」において実現できたと考える。しかしこれらの成果は、授業者や研究代表者の同時的な観察から確認したものである。一方、「作品」となった成果を後に検討し、本実践の可否を検討する場合には、「作品」をどのような観点で評価するか、本言語活動に関する評価の方法が今後の課題として残された。 この新たな課題に対しては、本研究の第二の目的であった国語科教育史上の物語創作の指導に関する理論や実践を参照枠としつつ、また、最新の実践的研究の評価手法を確認しつつ次年度にまとめ、更に計画から評価までを見通し、実現可能性を高めた〈物語創作の言語活動〉の授業研究を継続する予定である。
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