子どもの表現内容と色との関係について、心理学と教育学とが協働し、質的、量的な相互分析から背景に見られる生活や文化、活動のプロセスと色彩表現について分析し、子どもの色彩表現における特徴を示した。本研究では、現象学的・臨床的手法と合わせ、心理的測度を用い、さらには量的及び質的分析を統合して分析を行った。また、表現内容と概念形成や色彩との関係、文化的要因の関与等を検討し、プロセスの記録と行為、造形要素の情報を合わせ、表現内容と色彩がいかなる関連をもつかについての分析を試み,国内外でのフィールドをもとに、蓄積したデータと合わせて異文化的要因の検討を試みた。さらに,表現内容の色彩と形態の量的分析を通して子どもの内的イメージとその表出に関する心理学的側面の研究を行い,最終年度は特にシドニーと日本で統計解析による調査比較を試みた。 これまでの自然観、生命観に関わる視点では、日本と合わせ、オーストラリア、フランス、韓国、ドイツにおいて記録の収集をおこなってきた。量的分析では,造形要素から、色彩、形態、モチーフとなる事物について積み重ね行い、内容との関わりにおいて質的な分析を継続しおこない特徴を示した。それらの研究では、ヨーロッパ、オセアニアの作品では、自然の固有色が多く、内容も自然の風景や自然物が直接に描かれている内容が日本や韓国に比べ多くみられた。日本の特徴は自然の固有色以外の色も多く、形態も抽象的なものが比較して多くみられ、生活や文化、学習内容との関係が背景として予想される。しかし、まだ事例数が少なく造形要素と内容との関係の継続的な分析が今後の課題となる。
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