一般の人々を対象にした研究成果の発表として、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から延期になっていたピアノレクチャーコンサートを2020年9月に実施した。その中で、ドイツを中心とする古典派やロマン派までの語法で作曲した滝廉太郎、ドビュッシーやスクリャービンなどの近代音楽にも興味を示した山田耕筰、近代フランス音楽に用いられる旋法性を応用して日本的な情感を表現しようとした菅原明朗、近代フランス音楽の中でもドビュッシーらの朗唱法を歌曲に取り入れた橋本国彦ら、明治から昭和戦前期の日本人作曲家の作品、そして現代の作曲家として小畑郁男の和歌を題材にした作品を取り上げて、それぞれが影響を受けたと考えられる西洋音楽の作品と並べて演奏した。日本人作曲家が西洋音楽を具体的にどのような観点から取り入れて自らの創作に結実させていったのかを音を介在させて示し、各曲の分析を記した冊子を作成するとともに、わかりやすく解説を加えるようにした。 教員養成課程の学生を対象にした実践では、前年度に引き続き、これまでに作成したリズムの即興練習曲、日本音楽の音階やポピュラー音楽の旋法による即興練習曲を用いて指導を行い、指導方法やその結果を確認した。また、日本音階を用いた即興練習曲の応用として、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から実践が中止になっていた教材をもとに、日本古謡の旋律の一部を変化させたり、替え歌をつくったりするプログラムを実施した。教員養成課程の学生自身が言葉と旋律との関係や、終止音などに見られる日本音階の特徴に気づくことができるものである。学生の作品を分析し、実践の中で明らかになった点を踏まえて、修正を加え、替え歌をもとにした旋律づくりの指導法に発展させた。
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