研究課題/領域番号 |
16K04723
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
山口 孝治 佛教大学, 教育学部, 教授 (50460704)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 授業研究 / 授業分析 / 教授戦略 |
研究実績の概要 |
本年度は,若年教師1名を対象に,彼の授業実践の分析を通して,教授戦略の発揮の実態を明らかにした。被験教師は採用2年目で5年生を担当しており,彼の「走り幅跳び」の実践を観察・分析を行った。 収集したデータは申請者がこれまでに作成した「教授戦略観察カテゴリー」をもとに「教授戦略観察法(ORRTSPE観察法)」を用いて進めた。その結果,教授戦略の発揮の様相と態度得点の診断結果から,以下の点が明らかになった。 課題形成場面において,インセンティブ戦略(課題の明確化)の発揮により,授業のめあてを明確にすることで以後の学習を成功裡に導くことが推察された。併せて,課題解決場面におけるモニタリング戦略(子どもの動きの診断)とコミットメント戦略(相互作用)の発揮により,より子どもたちの課題の自立解決を促す様相が認められた。また,ロック・イン戦略(練習活動の工夫)がより,子どもたちの主体性を支えていること,シグナリング戦略(動きの観点の顕在化)による観察学習の導入によって,個人種目の「走り幅跳び」であっても,集団の凝集性を高めていくものと考えられた。こうしたロック・イン戦略やシグナリング戦略の発揮は昨年度に比べて成長が認められた。 一方,こうした様相と子どもたちの思いや願いと必ずしも対応していないことが態度得点の診断結果から推察された。これにはスクリーニング戦略(子どもの思いを探る)の弱さが影響しているものと考えられた。学習カードの活用や子どもの学びの過程の把握をより一層求められるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,昨年度と同様の被験教師の1年目の成長過程の実態を解明することができた点は予定通りである。被験者のサンプル数が今年度は1例であったため,次年度についてはもう少し対象者を増やしていきたいと考える。その点において改善点が残る。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画通り,介入2年目の成果を検証していきたいと考える。本年度の被験教師の授業実践を引き続き観察・分析を行う予定である。また,今年度がそうであったように,一単元の観察・分析は,授業者の日常の業務による調整等に困難が生じる恐れも予想される。そのため,別な方法(例えば,同一運動場面のVTR視聴による教師の注視点の共通性と差異性の検討)も並行して進めていきたい。
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