研究課題/領域番号 |
16K04725
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
多賀 優 龍谷大学, 農学部, 准教授 (00755671)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ミスコンセプション / 年代比較 / レンズ / 授業 / 中学校 |
研究実績の概要 |
昨年度実施した大学生を対象とした「レンズの性質」についての素朴概念調査法を用いた調査(大学3回生104人(社会学部36人と理工学部68人)に加えて,さらなる調査を実施した。 今年度は大学生以外の年代である小学生から大人(50歳台)を対象に,レンズのミスコンセプションを調査を実施して,年代別の正しい理解,間違った理解の人数の違いについて考察した。小学校6年生51人,中学校1年生(凸レンズの作図法を用いた授業後)56人,高校1年生426人,大人(30歳~50歳代)77人の合計714人を対象に実施した。その後,χ2検定による統計的な分析行った。その結果,人数の偏りは有意で,回答パターンは年代によって有意に異なることが明らかになった。また,残差分析も行った。その結果,中学校1年での凸レンズの学習後に,「凸レンズを通る光路がレンズの縦の中心線で屈折する」というミスコンセプションを保持する割合が,少なくとも高校1年生までは高いが,大学生,大人へと時間がたつと有意に減少していた。一方,「入射時と出射時の2回屈折する」という正しい科学的概念を持つ割合は,高校1年生で有意に低いが,大学3回生と大人では増加していた。このことから凸レンズの授業後に,時間の経過と共にミスコンセプションが減少し,正しい科学的概念が増加することが明らかになった。これが,レンズのミスコンセプションに特有のものなのか,あるいは他にも例があり一般的なものであるのかについては今後の研究課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中学生1年生を対象とした凸レンズの授業で生起するミスコンセプションの実態について調査を行ってきた。その結果、中学校理科の「レンズの性質」を学習した後、レンズの表面ではなくレンズの縦の中心線で光が屈折するという、学校教育における理科の授業でミスコンセプションを生起する事例があり、その特徴が明らかになった。 このミスコンセプションを保持している学生の中には、授業で生起したミスコンセプションを自分の元々の考えであると思い込む者がいることが明らかになった。また、中学1年生で獲得したミスコンセプションを保持する割合が中学・高校1年生で最大となり、その後、年齢と共に50歳台になるまで減少すること、逆に科学概念を保持する割合は高くなることが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
授業で生起するミスコンセプションの獲得後、年齢が高くなると共に、獲得したミスコンセプションが減少する理由や、ミスコンセプションを自分の元々の考えであると強く思い込む理由を解明する。またこれらの結果からミスコンセプションを防ぎ、科学概念へと修正する授業法の提案を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
介護により研究計画の遅れが生じ,次年度に未実施であった前年度の研究を行うため。使用計画としては,日本理科教育学会全国大会への出席と発表,国際学会への出席と発表,研究のためのアシスタントの雇用,学会年会費を計画している。
|