レンズの授業においてミスコンセプションの実態とそれが生起するメカニズムについて研究を進めてきた。これらの研究から学校教育においてミスコンセプションを生起せずに,正しい科学的概念を構築する教授法や教材の開発がより重要であることが明らかになった。 そこで本年度は,小学校6年生により正しい科学的概念の構築する教授法の検討を行った。ここでは岩石と鉱物の関連についての科学的概念を理解させるため,言葉を組み込んだ紙製の視覚教材(視覚的な教材とその中にある「言葉」の関連による科学的概念構築)の有効性を検証した。小学校6年生の2クラスで火山の単元の実践授業を行い,この授業前後にコンセプトマップによる概念調査を実施した。両クラスの授業では火山の噴火とそこから出てくる火山灰の説明を行い,実験群でのみ紙製の視覚教材を提示して,岩石は鉱物の集まりであることを説明した。コンセプトマップの結果から,統制群と比較して実験群では「鉱物が集まると岩石となる」という正しい概念が有意に増加していた。これらのことから小学生に対する岩石と鉱物の関連性を示す言葉を組み込んだ紙製の視覚教材の有効性が示唆された。 これらの事実から,今回の視覚教材の提示後の内化の後に,再度,コンセプトマップを用いて外化させることやさらに教師がそれを基に,課題を適正に判断して内化させる働きかけを行うことで,科学的概念の構築が一層促進されると考えられる。教師はこの外化されたコンセプトマップから課題を検討・抽出し,適切に児童・生徒にフィードバックすることもできる。このように,コンセプトマップと言葉を組み込んだ視覚教材を用いることで,科学的概念の深化が促進される手法を新たに展開できるものと思われる。これらの手法は,ミスコンセプションを生起せず,正しい科学的概念の構築に寄与する授業法の今後の方向性となりうる。
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