研究課題/領域番号 |
16K04727
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
西尾 正寛 畿央大学, 教育学部, 教授 (50441449)
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研究分担者 |
西端 律子 畿央大学, 教育学部, 教授 (20249816)
廣瀬 聡弥 奈良教育大学, 学校教育講座, 准教授 (40419461)
山田 芳明 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (80363175)
鴨谷 真知子 畿央大学, 教育学部, 研究員 (90369710)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 図画工作科 / 表現と鑑賞の能力 / 相互交流 / 学習支援 / タブレット端末 / 共感と賞賛 / 学生の能力育成 |
研究実績の概要 |
本課題1年次の課題であった相互交流の日常的な位置付けを試行するため,実践協力者の大和高田市立陵西小学校6学年担任の木村優希教諭と協議し,11月中旬からの継続的な交流活動を計画。1年次と同様に第1回は,ネットワークを介した交流に親しむことをねらいに,11月上旬に実施した絵に表す題材「墨でかく」(日本文教出版56年下22ー23頁)の作品の画像とコメントによる相互交流を設定。その後に,実施予定の立体に表す題材「12年後のわたし」(同46ー47頁)の導入後から完成まで継続して相互交流を行うことを計画。 「墨でかく」の交流時には,タブレットや交流サイトの扱い方,テキスト作成時の注意事項などについて,1年次に交流を経験している児童がサポートを行うことで,初めての児童も大きな抵抗が無く交流に馴染むことができた。 「12年後のわたし」の交流では,より日常に近い形での実践授業となるよう,児童が送信時を選ぶ方法で実施した。その過程で少ない児童で4回程度,多くの児童が15回前後,多い児童で20回程度の送受信を行った。35名の児童を対象とした活動後の質問紙によるアンケートでは,学生との交流が自らの活動に「とても役立った」と答えた児童が29名,「まあまあ役立った」と答えた児童が6名。理由では「とても役立った」と答えた児童から,自らの活動の具体的な場面や内容を伴った記述が得られた。この成果により日常的な交流活動において児童が必要な時期に必要な情報を得ることができたことを検証することができた。 本課題2年次の成果と課題は第40回美術科教育学会滋賀大会において発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年次の日常的な交流活動の過程では,「とても役立った」と答えている児童には顕著に,「まあまあ役立っている」と答えている児童にも概ね「自らの学びに自覚的になれている姿」が窺え,児童が期待する深い学びを得ることに貢献できたと判断した。送受信が少ない若干名の児童においても,その理由を「活動に夢中になっていたから」「聞かなくても自分でできたから」であることから,2年次の交流方法が児童の活動の進め方に応じることができた判断した。加えて,通常のものより小型のタブレットを実践協力校に貸与し,児童に使いやすさの比較を促したところ,ボタンやキーボード等インターフェイスの構成物の大きさやカメラの精度が児童にとって重要であること判断できた。 以上により,日常的な交流においても本課題の主な目的である「図画工作科の学習活動の過程において相互交流が児童の意識や活動に寄与する可能性」の検証について,計画通りに進展していると捉えている。 一方,学生に向けた交流では,比較的容易に質問ができるため安易に質問してしまう様子も窺え,学生が返信を控えたり自ら考えるよう促したりした場面があった。そうした学生の配慮が伝わりにくく,交流回数が少なかった児童の一部に「学生からの返信がなかったから」との答があり,送受信が成立しないと交流への意欲が低下が生じる可能性も存在する負の側面も表れた。これは児童の「情報モラルに関わる意識」を捉え,学級担任や学生の関わり方の改善のすべき課題としている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題3年次には,児童の質問紙のコメントを「児童の造形の資質や能力の働き」及び「情報モラルに関わる意識」の変容を読み取ることができる言葉のの因子分析を行い,変容や停滞を判断する規準を具体化することを目指す。そのためには,学習の時間の適切な時期に活動を振り返る自由記述を促し,分析の対象とする。「造形の資質や能力の働き」については,学習の評価規準を実現している,あるいは実現に向かおうとしている言葉を抽出し「知識・技能」「思考力,判断力,表現力」「関心・意欲・態度」の資質や能力の自覚と具体性の有無について検証を行う。「情報モラルに関わる意識」については西端,鴨谷が情報モラルの働きを抽出することを目的とした質問紙を実施し,その結果から「児童に期待する情報モラル仮説」を導き出す。言語の因子分析のためのアプリケーションを特定することができており,3年次には確実に実行できるようにする。 また,学生が支援活動を振り返った際に指摘した「児童が自ら発想をすることを大事にしないと学生の支援が成立しない」という点を交流のあり方への示唆と受け止め,相互交流における学生の「教員としての資質能力育成の可能性」も探ることを目指したい。 平成31年2月には,試行的に大阪教育大学附属平野小学校4学年との学校間の交流を行った。また現在は学会の発表の成果により,今課題への参画を希望する小学校教諭と実現のための交渉過程である。2年次までとは別の学校及び教員の協力を得て,研究成果に可能な範囲で普遍性を付与させることができるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,実践小学校における「児童の造形の資質や能力の働きと情報モラルに関わる意識の変容にかかわる児童のコメントの因子分析」に予定していた人件費謝金を運用できなかったことが最大の要因である。 平成30年度計画の優先事項として「児童の造形の資質や能力の働きと情報モラルに関わる意識の変容にかかわる児童のコメントの因子分析」のための人件費を研究代表者に集約しつつ,業務の役割分担と当初計画を見直し,分析を確実に実行できる状況をつくる。加えて,本課題に新しく協力する形で参画する学校及び教員との打ち合わせのための会議や接続テスト,授業に必要な材料,実践結果の検証等にかかわる物品費,旅費,謝金等に充てる計画である。
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