本研究は「音楽鑑賞を体験として取り入れたタブレット端末を利用した国語教育」に関するもので、文学作品に親しみが持てる授業として、作品内容の説明を補助する音楽作品の鑑賞を含めた授業を盲学校の中学部生徒を対象として実践した。この4年間の実践を通して、盲学校の教諭から、これまでに例がない独創性を有し、視覚障害を有する生徒の感じ方や考え方が深まっているようだと高く評価されている。 本研究により開発した7段階で授業評価ができるタブレット端末は、視覚障害サポート機能を活用したものである。これまで2段階の評価装置しか使用したことがない盲学校の生徒もストレスなく使用でき、生徒の考え方を明らかにするデータ収集ができ、次の段階につながる成果を得た。平成30年度は、ヴィヴァルディの「四季」より協奏曲第3番「秋」第1楽章アレグロ(小作農のダンスと歌)を用いた音楽鑑賞を通して、詩的な表現能力を習得することを目指して授業を行った。これは愛知教育大学の教員志望学生の発案をもとにしたもので、視覚に障害のある学習者が、音楽鑑賞によるイメージから生まれた言葉をもとに、自らの好みや印象深く覚えていることを手掛かりに連想していき、詩的な表現を生み出すことができた。曲を聴いた印象から連想して詩的表現を作り出していく方法は、教員志望学生が授業に参加したこともあり、視覚障害がある生徒にとって親しみやすく好印象であった。 令和元年度は、より多数の教員志望学生が授業に参加できるように盲学校と愛知教育大学をネットワークで結んだ授業の計画に取り組んだ。教員志望の学生にとって、障害がある生徒を対象とした授業実践を体験することは、極めて貴重な経験となった。この4年間で、本研究の課題と目的はすべて達成できた。令和元年度の取り組みにより、本研究をさらに発展させる新たな課題を明らかにすることができた。
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