研究課題/領域番号 |
16K04740
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上里 京子 群馬大学, 教育学部, 教授 (80202448)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カリキュラム構成 / カリキュラム開発 / 予防キャリア問題教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日仏のキャリア開発教育及び予防キャリア問題教育に関する「教科の再構築」、そして「関連教科間の連携」の実態について比較検討することを目的とし、本年度は主にフランスの「予防・健康・環境」科の学習指導要領と教科書等の資料を調査・収集し、分析を行った。 プログラムの序文において、この教科は、健康、労働、環境の分野において国家および欧州計画によって定義された優先的な教育活動と予防活動に十分に寄与するとし、生涯にわたる職業教育の一環として、非常に多様な公衆を対象としていることを明示している。 この教科理論の反映状況等について、代表的な教科書の分析を通して検討した。S. Crosnier他著作「PSE(Foucher、2010)」の職業生活教育に関する内容は、5章労働活動における職業的リスク(モジュール8に対応)、6章機械に関するリスク、7章電気に関するリスク、8章生物学的リスク、9章温度環境に関するリスク、10章光環境に関するリスク、15章労働災害および職業病に関する手続きと費用(M9に対応)、16章化学的リスク(M10に対応)、17章荷扱いと背中、18章筋骨格障害、19章人間工学的アプローチ(M11に対応)、21章労働災害の分析(M12に対応)から編まれており、プログラムに示されたモジュールに沿うだけでなく、より充実した教育内容となっている。 「5章労働活動における職業的リスク」を例に章の展開を概観すると、現代社会で日常的にみられるケース事例をあげて状況分析することからはじまり、活動1で状況の要素分析を行い、活動2危険の特定から損害の発生までの分析、活動3リスクの推定、活動4リスクの評価(解決策の提案)、活動5予防措置、活動6予防措置の選択基準(総括と要点整理)によって系統的なプロジェクト学習が組織され、帰納的学習過程と演繹的学習過程の結合が図られている点が特徴的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は主に「予防・健康・環境」科の最新の学習指導要領と教科書などの資料を調査・収集し、それらを分析することができた。 「予防・健康・環境」科のプラグラムの序文には、この教科が、健康、労働、環境の分野において国家および欧州計画によって定義された優先的な教育活動と予防活動に十分に寄与するものとし、生涯にわたる職業教育の一環として、非常に多様な公衆を対象としていることを明示しており、フランスだけでなく欧州連合全体が、生涯にわたる職業教育や、健康・労働・環境に関わる問題解決と予防教育を強力に推進していることがわかった。 この教科理論の反映状況等について、代表的な教科書の分析を通して検討した結果、社会科学と自然科学の知識を学びながら問題解決と予防の実践力を取得することを主眼とした「労働活動における職業的リスク」の章の展開に見られるように、はじめに「現代社会で日常的にみられるケース事例」をあげて状況分析することを指示している。次に、活動1で状況の要素分析を、知識を動員して行い、活動2危険の特定から損害の発生までの分析、活動3リスクの推定、活動4リスクの評価(解決策の提案)、活動5予防措置活動、6予防措置の選択基準(総括と要点の確認)によってプロジェクト学習が組織されている。 この展開は、社会や職業生活の現実的な状況を分析することで帰納的学習過程を出発させ、問題解決の方法論を用いて推論し、演繹的方法によりリスク評価や予防措置の選択ができるような系統的な教材配列が特徴的であり、プログラムの教授・学習過程と方法を緻密に具現化した内容となっていた。 この教科をはじめキャリア開発教育に関わる教科や教育課程のあり方についての議論が多様化しているため、本研究を慎重に進めていく必要があり、やや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法論に基づき、フランスの初等教育に設置されている「科学・技術 Sciences et Technologie」科教育、コレージュでの「技術 Technologie」科教育、職業リセの教養教育科目「予防・健康・環境」におけるキャリア開発・予防キャリア問題の教育内容における科学的概念と生活概念の関係性の特徴について、学習指導要領および教科書の分析を通して解明する。 さらに、フランスの「世界の発見」科、「公民」科、「道徳」におけるキャリア開発・予防キャリア問題教育の内容と、子どもの生活概念との関連について学習指導要領および教科書の分析を通して検討する。 本研究の推進方策として、教育内容における科学的概念と、子どもの生活概念を関連づける方法論に焦点を当てて分析することにより、日本の小・中・高の家庭科教育におけるキャリア開発・予防キャリア問題教育における科学的概念の構造化に有効な示唆を得ることができると考える。 また、フランスのキャリア開発・予防生活問題教育に関わる各教科では、教育課程を貫く「科学」に基礎をおいた科学教育という基本理念のもと、フランス独自の科学の認識論による科学的概念によってカリキュラム開発が進められていると推測されるが、この点を踏まえて比較分析することで、日本の家庭科教育を中心としたキャリア開発・予防キャリア問題教育における独自の科学的概念を市民生活リテラシーとして構築し、それを基盤としたカリキュラム開発を推進できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)フランス現地での資料調査及び収集等については、政情不安定が続いていることから、これまでの研究期間において極力渡航を差し控えた。また、購入予定であったパソコンについては、必要な機能を備えた最新機種の選定を待機しており、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、フランスや国際学会開催国への渡航を計画し、資料調査及び収集、情報収集等を行う予定である。また、パソコンについても、必要な機能を備えた最新機種を精選し、購入する予定である。
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