研究課題/領域番号 |
16K04740
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上里 京子 群馬大学, 教育学部, 教授 (80202448)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カリキュラム構成 / カリキュラム開発 / 予防キャリア問題教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日仏の予防キャリア問題教育に関するカリキュラム構造と、「教科間連携」の実態について比較検討することを目的としている。本年度は主にフランスの「予防・健康・環境」科のコンピテンシー構造と内容、他教科との連関に関する記述内容について分析を行った。 この教科のprogrammesでは、職業生活の問題解決と予防を目的にした市民性教育であること、自己と他者の相互尊重の能力を「市民の能力」と規定し、批判的能力の発達を目指す科学技術の教養であること、学習方法として演繹的な分析過程と、帰納的な問題解決過程を統合する方法論を獲得することを教育目的として明示している。 また、教授・学習方法として、社会生活や職業生活の具体的状況に基づく活動主義の方法を用い、特に情報通信技術を活用すること、知識、能力、態度の獲得によって、その他の教育と関連しながら自立した責任ある個人の育成に寄与することを重視している。 この「知識、能力、態度」の獲得については、モジュールごとに詳細が示され、これらのコンピテンシー間の関係がマトリクスとして構造化されている。例えば、「モジュール9 :企業における予防の規則で定めた枠組み、9.1 予防の法的枠組みを理解する」では、知識:予防の一般原則、能力:例を用いて予防の一般原則を説明する、育成される態度:権利と義務の自覚、といった内容が示されている。 コンピテンシーのマトリクスを概観すると、生理学、医学、人間工学などの自然科学と、法学、社会福祉学などの社会科学の専門的な知識が詳細に示され、それらの理解を通して育成する能力として、分析力、判断力、評価力、探究力などが重視されている。また、それらの能力を子どもが獲得することによって、遵守の精神や批判的精神、発意の精神、権利と義務の自覚などの科学的探究の態度や市民としての責任ある態度を育成できる構造となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は主に「予防・健康・環境」科の最新の学習指導要領等の資料の分析を進めることができた。プログラムの序文には、この教科が、健康、労働、環境の分野において国家および欧州計画によって定義された優先的な教育活動と予防活動に十分に寄与するものとし、生涯にわたる職業教育の一環として、非常に多様な公衆を対象としていることを明示しており、欧州連合全体が、生涯にわたる職業教育や、健康・労働・環境に関わる問題解決と予防教育を強力に推進していることが確認できた。 この教科理論の反映状況について、プログラム等の分析を通して検討した結果、社会科学と自然科学の知識を学びながら問題解決と予防の実践力および態度の獲得を主眼とした「コンピテンシーのマトリクス」にみられるように、はじめに「現代社会で日常的にみられるケース事例」をあげて状況分析し、次に、状況の要素分析を知識を動員して行い、危険の特定から損害の発生までを分析して、リスクの推定と評価(解決策の提案)を行い、予防措置活動の選択基準を確認すると共に実行するといった「プロジェクト学習」が組織されていた。 この教授・学習過程と獲得するコンピテンシーの構造は、社会や職業生活の現実的な状況を分析することで帰納的学習過程を出発させ、問題解決の方法論を用いて推論し、演繹的方法によりリスク評価や予防措置の選択ができるような系統的な教材配列が特徴的であり、プログラムの教授・学習過程と方法を緻密に具現化したマトリクスになっていた。 この教科をはじめ予防キャリア問題教育に関わる教科や教育課程のあり方についての議論が多様化しているが、2020年1月以降は新型コロナウイルス対策のため、国外での資料調査や研究者へのインタビュー調査等ができない状況が続いており、やや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の方法論に基づき、フランスの初等教育に設置されている「科学・技術(sciences et Technologie)」科教育、コレージュでの「技術 (Technologie)」科教育、職業リセの教養教育科目「予防・健康・環境」におけるキャリア開発・予防キャリア問題の教育内容における科学的概念と生活概念の関係性の特徴について、学習指導要領および教科書の分析を通して解明する。 さらに、フランスの「世界の発見」科、「公民」科、「道徳」におけるキャリア開発・予防キャリア問題教育の内容と、子どもの生活概念との関連について学習指導要領および教科書の分析を通して検討する。 本研究の推進方策として、教育内容における科学的概念と、子どもの生活概念を関連づける方法論に焦点を当てて分析することにより、日本の小・中・高等学校の家庭科教育におけるキャリア開発・予防キャリア問題教育の科学的概念とカリキュラムの構造化に有効な示唆を得ることができると考える。 また、フランスのキャリア開発・予防生活問題教育に関わる各教科においては、教育課程を貫く「科学」に基礎をおいた科学教育という基本理念のもと、フランス独自の科学の認識論による科学的概念によってカリキュラム開発が進められていると推測されるが、この点を踏まえて比較分析することで、日本の家庭科教育を中心としたキャリア開発・予防キャリア問題教育における独自の科学的概念を市民生活リテラシーとして構築し、それを基盤としたカリキュラム開発を推進できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)フランス現地での資料調査や研究者へのインタビュー調査等については、2020年1月以降、新型コロナウイルス対策のため、渡航が不可能となったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度、新型コロナウイルスが終息した暁には、フランスや国際学会開催国への渡航を計画し、資料調査及び情報収集等を行う予定である。
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