本研究は、在日コリアンを対象とした小学校における在日外国人児童生徒教育を行うための教師の専門性を明らかにすることを目的としている。以上の目的を明らかにするために、次の資料に基づいて、考察を行った。第一は、西日本を中心とする在日外国人児童生徒教育の教員研修会に参加した際に収集した実践報告に関する資料と、実践の現状についての記録である。第二は、全国外国人教育研究協議会が出版した実践記録と研修会の内容を記した資料である。第三は、Z市小学校外国人教育研究会の教師へのインタビューの記録である。 そこで明らかになったことは次の三点である。一つ目は、教師が在日コリアンの子どもを対象とした教育実践の専門性を高めようとするきっかけが在日コリアン集住地域への赴任と同僚の影響にあるということである。教師は、在日コリアンであることから本名を名乗れないなど不利な立場に立たされている子どもの現状について認識し、その認識を共有できる同僚との出会いがその専門性を高める契機となっていた。二つ目は、在日コリアンを対象とした教育実践の専門性が本名を呼び名乗ることのできる差別のない学級づくりができる能力であると認識されていることである。つまり、それは、在日コリアンが出自を明らかすることができ、子どもたちそれぞれが差異を尊重できる学級づくりに取り組むことのできる教師の専門性である。三つ目は、6年社会の授業の中で、日朝関係史を教えることである。具体的には、近代以前の良好な日朝関係と、近現代における在日コリアンの歴史と彼らとの共生における課題の双方を教えることができる能力である。その他にも、遊び、物語、音楽、食といった韓国朝鮮及び在日コリアンに関連する日常的な文化を学習に取り入れることができることも、その専門性としては必要である。
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