本研究の目的は、数学的視点を取り入れた環境教育に関する学習教材を開発・実践することであった。具体的には、児童・生徒が数学的視点から環境問題に対する理解を深める教材を開発・実践することを通して、教材開発・授業実践の過程を検証した。そのため3つの教材開発を行った。(1)白川郷と五箇山の合掌造りの題材に関する授業実践を行った。五箇山の屋根の傾斜角度は60°である一方、白川郷の屋根の傾斜角度が60°より大きいのは、五箇山は降水量が白川郷よりも冬場の降水量が多いためである。このことを五箇山と白川郷の1年間の月別降水量のデータをグラフに表すことで確認した。合掌造りは自然環境の要請である豪雪と社会環境の要請である冬場の仕事(養蚕)と建設費の圧縮(上屋と下屋)を考慮している。(2)水道の利用と電力の利用の題材に関する授業実践を行った。表やグラフに基づいて富山の水資源の利用の特徴を読み取ることで、地下水位の低下と降雪量を関係づけた。家庭と学校での水道や電力の利用について、表やグラフに基づいて学校では夏場と冬場にピークがあるのに対して、家庭では一定である特徴を踏まえて、節約の工夫の仕方が異なる。(3)富山県の交通実態を理解し、便利な交通について、通学時間について、同じ地区から通っているにも関わらず通学時間が違ったり、遠い地区からでも比較的早く登校できる。これは、バスの本数、道路渋滞、乗換時間などの要因によって異なり、乗り物の速さだけでなく、出発時間や乗り換え時間の工夫が大切である。このように環境問題は複合的であるのが特徴である。生徒の数学に関する意欲や関心は高まる地域教材の開発実践ができた。
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