研究課題/領域番号 |
16K04752
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
郡司 賀透 静岡大学, 教育学部, 准教授 (30412951)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 理科カリキュラム論 / 理科教材史 / 教科書研究 / 先端テクノロジー |
研究実績の概要 |
1.理科教材史研究:平成29年度は、中学校理科教育におけるテクノロジーに関する教育内容・教材の選択意図とその変遷の解明に着手した。なかでも、1950 年代後半の日本の中学校理科教育におけるテクノロジーに関する教育内容の選択要因を対象に研究を進めることにした。テクノロジーと関連の深い「工業」を論点として、当時の学習指導要領作成に関わった教材等調査研究会の議事録を分析した。その結果、当初、テクノロジーに関すする教育内容を強調する意見があったものの、回を重ねるに従って、自然科学の基礎的内容の重視に変化した事実が明らかとなった。 2.理科教授法の検討:学習内容に文脈を与える、いわゆるコンテクストベースドアプローチに関する研究が、現在海外で進められている。平成29年度は、アメリカの化学教科書Chemistry in Context における“context”に関する記述内容の変遷を精査して、“context”の意味の一端を明らかすることができた。すなわち、(1)“context”を「織る」というように、何らかの行為主体や対象が想定されていた。(2)“context”が「ストーリー」に置き換えられて、「ストーリー」が読者を新たな多様な方法でもって行為するように動機付けるとされていた。 3.カリキュラムの体系化に向けた基礎的検討:附属学校における共同研究を通して、附属学校における試行授業と生徒へのアンケートとインタビューを行う際に必要な準備等を調べることができた。今後、カリキュラムの有効性を明らかにするために必要な実践研究の基礎的な検討を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.当初予定では、平成28年度及び平成29年度の2年間で、戦後日本のテクロジー教材の選択意図と変遷の解明を目指してきた。その結果、理科教材史研究においては、高等学校化学教科書における化学工業教材の変遷に加えて、中学校理科におけるテクノロジーに関する教育内容にも着目して、1950年代後半における教育内容の選択要因の一部を明らかにすることができた。 2.現代の理科カリキュラム編成法として注目を集めつつある、コンテクストベースドアプローチの「コンテクスト」の意味についてもアメリカの化学教科書の記述内容の変遷を精査することができた。テクノロジーに関する教材は日常生活やキャリアに直結することから、学習内容にコンテクストを付与しやすい性質がある。そのため、本研究において、「コンテクスト」の意味を明らかにすることは、今後の理科カリキュラムの体系化に向けた必要不可欠な研究となっていた。これらの研究を通して、今後のカリキュラム編成法の解明とその実証性の担保に向けた基礎的な知見を得ることができた。 3.理科カリキュラム編成法に実証性を担保する附属学校における試行授業等を計画している。その試行授業等を効果的に実施する予備調査について、研究授業の共同研究者として加わったことで実態を把握することができた。このことから、次年度の計画をおおむね立案するることができた。 4.新たなテクノロジー教材として「人工衛星」を活用した科学教育の在り方に関する研究会にも参画し講演を行った。この参画を通して、本研究成果の一部を社会に還元することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.学習内容に文脈を与える、いわゆるコンテクストベースドアプローチが現在、海外で研究が進められている。これまでのアメリカの先駆的取組と同様に、コンテテクストベースドアプローチを採用しながら、資源小国という点でわが国と共通するイギリス等の教科書、教材、教授資料を収集して分析する。両国と日本の実態と比較し、日本の伝統的な理科教育観を踏まえながら、日本の理科教育における先端テクノロジーの学習内容の独自性・卓越性を明らかにする。 2.解明する日本の理科教育における先端テクノロジーの学習内容の独自性・卓越性に基づいて、当該時期は具体的な教授法の検討を行う。附属学校において試行授業を行い、生徒へのアンケートやインタビューを通してカリキュラムの有効性を明らかにしつつ、日本にふさわしい先端テクノロジーに関する学習内容の理論化を行う。 3.日本の児童・生徒に欠くことのできない資質・能力を育成する視点から、カリキュラムの体系化を行う。現在の学校教育では、PBL(課題解決型学習)の確立が急務である。先端テクノロジー関する学習内容は、社会のニーズ・課題と結びついていることから、児童・生徒の活用型学力のさらなる向上に寄与し、かつ、21世紀の社会を生き抜くための創造性を涵養する立場から検討を行う。 4.これまでの実態、現在の実態、理論化の3つの視点から総合的な検証を行い、研究成果を総括し、先端テクノロジーの学習内容に着目した理科カリキュラムの体系化を行う。学会発表および学術誌掲載などの情報発信等を通して、科学教育研究者から専門的知識の提供を受けて研究の協議を行い、精緻化および客観化を図る。
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備考 |
招待講演を行った研究会のwebページである。
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