研究課題/領域番号 |
16K04753
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
近藤 裕幸 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40583422)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 地理教育 / 地球儀 / 地理的な見方考え方 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,戦後社会科の授業で定型化(方位・面積・距離の指導について)している地球儀指導において,「ホワイトグローブ」を用いることが地理の能力をどれほど高められるのかということを,関心意欲態度・知識理解・思考判断表現・資料活用の技能の観点から,小学生・中学生の発達段階による差異も含めて明らかにすることである。 本年度の成果としては,戦前と戦後の地球儀指導における相違点を明らかにしたことである。 戦前の地球儀指導書においては,子どもの空間認識を育てようと言うことではなく,暗記中心であるということである。地球儀を使って緯度や経度,国名を覚えさせることが何より優先されており,地球儀を用いることのメリットがまったく,平面の地図で行っているのと同じである(松居真房訳『地球儀便覧』など)。もちろん空間認識を育てようとする試みもみられるが,暗記中心であることは避けられない。 一方,戦後の地球儀指導においては,先行研究の検討から二つ問題があることがわかる。まず,地球儀は子ども一人一人に与える余裕がないので,リンゴやペットボトルなどを用いて地球に見立てて,緯度経度などの地理的概念を学ばせようとしていることである。次に,地球儀を指導する方法が定形化されており,距離・方位の測定,面積比較,経緯線・略地図を書かせたりすることで,平面の地図との相違を学ばせる活用が主であるといえることである。戦前と比べ,空間認識を育成しようとしたり,地理的概念を学ばせようとしたりしていることは評価できるが,その方法は定型化しており,打開策が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の計画は,基礎的段階として地球儀の指導方法の歴史的変遷を明らかにし,ホワイトグローブの作成と,それをもちいた授業実践を試行することであった。 しかし,平成28年度の成果は,研究費の交付が昨年11月に急遽決まったことと,既に行っていた研究との兼ね合いもあり,大幅に遅れている。具体的には,明治から戦後に至る地球儀指導の方法をたどることはおおむねできた。この成果はこれからホワイトグローブ作成と授業実践をする上で重要なものであるが,まだ不完全なところがあるので,今後も引き続き行っていく。本実践のもっとも大事なホワイトグローブの注文はまだ行われていない。すみやかに発注したい。
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今後の研究の推進方策 |
2017年4月~6月にかけて地球儀の使用方法の歴史的変遷をまとめ,それをもとに,学校教育における地球儀指導の画一性を導出する。その後,どのような地球儀が児童生徒達に地理的認識力を高めることができるのかを考え,それをふまえてホワイトグローブを作成する(7月~9月)。10月頃にはいくつかの学校で試行的にホワイトグローブを使った授業を実践したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は途中で採択されたため,研究環境を整え協力を得る準備をスムーズに進めることが難しく,物品の発注ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,当初の予定通り,ホワイトグローブを外部の業者に発注し,授業実践を行う予定である。また,地球儀の古書などを調べるために,国立教育政策研究所に行く予定である。
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