研究課題/領域番号 |
16K04756
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
磯部 由香 三重大学, 教育学部, 教授 (80218544)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 調理 / 段取り / 家庭科 |
研究実績の概要 |
健全な食生活の実現に調理を実践する習慣は重要であるが、調理技能を有していても実践にはつながらないという課題がある。この課題の解決には「調理が面倒」という意識の解消が必要であり、これには調理を効率よく行うことができる段取り力を持つことが有効である。現在、学校教育の家庭科では技能習得の指導に重点がおかれ、段取り力育成の視点が不足している。そこで本研究では「調理における段取り力を向上させる授業モデル」を構築し、段取り力向上の手立ての有効性を検証する。今年度は、調理における段取り力の定義を明確化し、段取り力を客観的に評価する指標の作成を試みた。 まず、調理行動を取り上げた既研究、効率を意識した調理実習についての授業実践、調理実習の指導教員対象としたヒアリング調査から、調理における段取り力を「料理の出来上がりの見通しを持ち、調理の作業過程を考え、効率良く調理を進めることのできる力」と定義した。 次に、中学校の教科書を取り上げ、調理実習例として掲載されている個々の料理の調理操作(洗う、切る、加熱する、味つけする、盛り付けるなど)を整理し、段取り力を測定するのに適切な複数の料理からなる5献立を作成した。作成した献立について、様々な手順を実際の料理を作り、最も段取りの良い基準(短時間で効率よく調理することが可能な手順の例)を作成した。 段取り力を評価するため指標の作成のために、調理熟練者(段取りが良い人)と調理初心者(段取りが悪い人)を対象とした観察実験を行った。調理行動を撮影し、撮影したデータから動画認識システムを利用し、トラッキングを行い、動線の図式化を試みた。また、視線カメラを用いて、ある決まった料理に関する調理行動のみを切り出し、複数の調理操作の重なり時間の可視化についての検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調理における段取り力の定義を明確化することができた。また、中学校家庭科の教科書に記載の料理について分析し、段取り力を測定するのにふさわしい献立を5つ作成することができた。この2点においては、ほぼ、当初の目的を達成することができた。 しかし、段取り力を評価する指標については、個人による献立の難易度の違いが異なることから、仮説通りのデータを取ることができなかった。また、調理行動のデータ入手に時間がかかることから、段取り力を比較するために十分な調理熟練者と非熟練者のデータを取ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
段取り力を評価するための指標については、より多くのデータを取ることにより、調理行動の可視化、数値化を試みる。 また、他領域における段取り力を向上させる授業についての先行研究を収集し、段取り力の向上を意識した授業と意識していない通常の指導との相違点を見出すことにより、指導方法の具体的な特徴を見出す。また、ビジネス分野における先行研究(新村・2012など)における段取り力の向上の手立てを分析することにより、一般的な手法を見出す。これらの分析結果から、指導方法、活動内容、ワークシート等の配布資料、掲示資料など、調理実習の指導に活用できる手法を明らかにする。 昨年度、作成した行動観察のための献立を元に、調理実習の計画から振り返りまでの授業モデルを作成する。授業モデルは調理計画、調理実習、実習後の振り返りから構成される。これらの学習過程において、どのような指導方法、活動内容、ワークシート等の配布資料、掲示資料が必要かについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
段取り力評価指標作成のための調理行動データの取得に予想以上に時間がかかったため、データ数が不十分であった。そのため、次年度も引き続き、調理観察を行い、調理行動データを取得するための経費が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、より多くの調理行動データを取得するために、データ取得のための機器の追加購入、対象者への謝金、データ入力および分析に費用をあてる。
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