昨年度の調理行動観察の分析の結果、段取り行動において、洗い物などの「片付け」が重要な要素であることが明らかとなった。そこで、調理初心者と調理熟練者の調理行動について、片付けまで含めたデータを収集し、分析を行った。その結果、隙間時間の活用である洗い物作業の出現回数、並行調理、効率のための優先順位および作業の集約を意識した調理手順、効率を低下させる温めなおしの有無によって、段取り力を評価できることが明らかとなった。昨年度同様、調理行動観察の動画データのフレーム間差分を取り、動いている部分が明るい色になるように画像化し、これを圧縮して時系列に並べ、調理行動時間すべてにおける調理者の動きを一つに集約した画像について比較したところ、調理初心者と調理熟練者の明るい色(動作部分)の出現パターンに差が見られた。 また、昨年度、作成した段取り学習プログラムについて、学習指導案、指導用スライド、作業用資料を作成した。これを用いて、中学校・高等学校での現場を想定したグループを対象とした講習を実施した。その結果、講習受講者は非受講者より平均調理時間が短く、調理手順の中で、洗い物の出現回数が多く、隙間時間に片づけを意識し、「野菜を洗う」「野菜を切る」などの調理作業の集約化を行っていた。また、受講後のアンケート調査では、自らの調理手順に対する自らの課題への気づきや「段取り」や「調理意識」に関する記述が多く見られた。以上より、この学習プログラムにより「調理における段取り」の考え方を理解し,見通しをもって調理を行うために調理手順を考えることに有効であることが明らかになった。さらに、段取りのよい調理の実践が、調理へのマイナスイメージを払拭させ,調理への意欲を高めたと考えられる。
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