研究課題/領域番号 |
16K04767
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 真 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70455046)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 器楽学習 / 音楽科教育 / 教師教育 / ドイツ / 実践力 / 教育プロジェクト / ハンブルク州 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ハンブルク州の器楽学習プロジェクト(JeKi)の構造と特質を明らかにするために、教育省関係者への聞き取り調査、学校の音楽科教師および楽器講師の授業視察を行った。 まず、JeKiプロジェクトの背景と継続的実施を実現するための政策について明らかにした。現在参加している小学校(62校)すべてにおいて2年生からJeKi授業として5~6種の楽器のグループレッスンを実施し、通常の音楽の授業が関連づけられていること、学校の音楽科教師と登録された楽器講師が協働でカリキュラムを実施していること、音楽科教師と楽器講師のための研修制度が充実していることなどを確認した。 次に、JeKi授業と通常の音楽の授業の視察を行い、その内容について分析・検討したところ、①楽器の演奏技術の習得に関係して、必要な音楽理論の学習や、歌唱・リズム学習などの多様な活動を織り交ぜていること、②楽器のグループレッスンにおいて全体指導と個別指導を適切に混ぜて指導していること、③授業者の教授行為が小学生の発達段階や音楽レベルに適したものであること、が明らかとなった。 これらを総合し、JeKiプロジェクトの意義を見い出した。第1に、プロジェクトの学習対象者に含まれる文化的・経済的水準の低い家庭の子どもが、1つの楽器を継続的に学ぶことをとおして、彼らの文化的水準を引き上げている。第2に、JeKiプロジェクトに関わる学校の取り組みの成果が子どもを介して家庭によい影響を与えている。第3に、JeKiプロジェクトの実施によって学校における音楽学習の質的な高まりが認められる。また、JeKiプロジェクトに関わる音楽科教師および楽器講師の職能向上、音楽実践の質的拡大、自身の授業の再考・再構築の機会提供が認められ、結果としてJeKiプロジェクトへの参与が音楽科教師の自律性形成に大きな影響を与えていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究として予定していたハンブルク州共通の学習プロジェクトの実際について、プロジェクトの構造と音楽科教師の授業実践の両側面から調査・分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成28年度の研究成果に基づき、教師固有の教育観、および現職研修の構造と特質について調査を行う予定である。当初の計画では公立学校を対象としていたが、これまでの研究において私立学校とのコネクションも得たため、特に音楽教育に重点をおくシュタイナー学校も視野に入れた研究に発展させる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査を2回予定していたが、現地学校・教師との予定が合わず、1回となった。そのため、各種資料・文献の購入を行い、未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の調査において執行予定である。特に、ドイツから音楽科教師を招聘する際の旅費として充てる。
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