最終年度となる平成30年度は,天気図をもとにした気圧配置の把握と雲の分布を理解できるよう,天気図と気象衛星の赤外画像とを重ね合わせて表示するシステムの開発を行った。また,昨年度に改良を行った雲の変化を毎日記録する“記録システム”と併用することで,“なぜ”そのような雲が発生し,“なぜ”そのような動きをするのか,雲の種類と動き方を,気圧配置から検討する授業実践を大学において行った。 昨年度までに開発を行った雲の記録システムでは,広島大学教育学部C棟屋上に設置したカメラを利用して,キャンパスの北側の空を対象として,一年を通して発生した雲の種類や移動する方向の変化についてタイムラプス機能を用いて記録を行っている。この記録データは,およそ日の出前から日の入り後までの空の状況を,5分に1枚のjpg画像と,10秒に1回撮影したものをタイムラプス動画として作成した動画(1日分は約300MB)から構成される。 また, 気象の分野で学習する“飽和水蒸気量”や“湿度”と,空気の上昇に伴って温度が低下する“乾燥断熱減率”の知識をもとに,実際に雲がどういう条件で形成されるかに焦点をあて観察を行えるよう,本システムでは下層雲を観察の対象とし,この持ち上げ凝結高度を,地表で観測した気温と湿度を元に計算するページを,JavaScriptを用いて作成しており,このページで計算された持ち上げ凝結高度を,観測値の周囲にある山々の標高を参考にして比較する活動や,赤外放射温度計を用いて雲底温度を観測した数値とを比較する活動を通して,学習内容と観察した事象の関連付けを可能としている。 天気図と衛星画像を重ね合わせたものと,実際に観測した空模様の変化とを対比することで,気圧配置と雲の動きや,低気圧が近づいてくる際の雲の高さと種類の変化についてより理解が深まったと考えられる。
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