研究課題/領域番号 |
16K04772
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
堺 正之 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10170565)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 道徳科 / 教材研究 / 発問 / 教材開発 / 道徳の時間 |
研究実績の概要 |
○道徳「教材研究」についての理論的検討 道徳「教材研究」に求められる視点について明らかにするための文献研究をおこなった。また、他教科における教材研究の手法との異同を明確化するため、読み物という形式面での共通性のある国語科における教材(とりわけ文学教材)分析の意義と方法について検討をおこなった。これらをふまえて、今後の「道徳科」教材に求められる要件等について考察した。道徳科の教材は、児童生徒が道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める学習を行うための手掛かり、互いに学び合う共通の素材である。そのため、学習指導要領には教材に関する留意事項が掲げられているのであるが、これらは教科書以外の教材を開発・活用する際の要件にもなることが明らかになった。 ○指導案(発問)作成の研究と試行 教員免許状更新講習における試行をおこなった。選択必修領域(小学校教員対象1講習、中学校教員対象1講習)と選択領域(小・中学校教員対象1講習)の3講習および免許法認定講習1講習の計4講習、さらに福岡市教育センター道徳研究室における研修(福岡市教育センター平成28年度研究報告書 第1010号参照)を通して、道徳教材(読み物資料)をもとに、資料分析と発問づくりの試行を実施した。その工夫点は、教職経験年数の異なる教員で構成するグループにおいて、各自が考えを出し合ってそれらをまとめ全体で共有することである。これにより、教員が児童生徒の反応(思考)をできるだけ幅広く予想して展開に生かせるようになるということを実感できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究がスタートして初年度ということもあり、当初の計画通り文献による研究が中心であったが、2年目に予定している学会発表に向けて準備を進めることができた。また、さまざまな講習、研修の場において、小・中学校の教師たちと道徳の教材研究の手法について協議し、これを試行、実践することができた。このような理由から、研究は概ね当初の計画どおりに進んでいると考える。 しかしながら、このような取り組みを学校単位で実施しているケースについての調査が不十分である。平成29年度の研究計画に取り入れながら、さらなる進捗を図っていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
○年間指導計画の意義と作成の実際についての検討 「特別の教科」としての道徳科では、これまで以上に年間指導計画の意義が大きくなる。具体的には、①各教科等における指導との関連を図る指導や体験活動等を生かす指導の工夫、②複数時間の関連を図ることにより指導の効果を高める工夫、③必要により他学年段階の内容を付加する工夫、などである。これは年間指導計画が果たす「指導法改善促進機能ということができる。本研究では、年間指導計画の作成にあたって教材研究がどのように生かされているのか、小・中学校における事例を収集し、分析する。 ○研修モデルの提案と試行 1年目の研究成果を踏まえ、教師が協同して取り組める研修スタイルを作り出すことを目指す。求められるのは、児童生徒の「思考」の広がりと深まりに焦点をあてることである。現時点で構想する研修のおおまかな流れは、以下の通りである。①ねらいの定め方:何をとらえさせるかを話し合う(その過程で各自の経験が生きる)。②発問づくり:児童生徒の思考を予想する(できるだけ幅広く予想し教師の対応を考えるために、協同が生きる)。その上で、ねらいに迫るための発問を確定する。③学年で協議して授業のたたき台を作り、それぞれのクラスで実践する。 以上をベースとしながら、学校等の実情に応じて一部を取り出し、あるいは重点を定めて研修に組み入れて試行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支出が当初の予定より少なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
教材研究を中心とする学校単位での研修についての調査を29年度の研究に取り入れることにより、研究のさらなる進捗を図る。
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