研究課題/領域番号 |
16K04773
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
青山 之典 福岡教育大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00707945)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 説明的文章教材の難易度 / 論理的認識力 / 構造の複雑さ / 論理の型 / 基本的な結束性 / 階層構造 |
研究実績の概要 |
小・中学校の滑らかな接続を実現する視点から,カリキュラム構成に関する研究が進められており,説明的文章の読解指導においても,その問題意識は共有されている。問題解決のための有力な考え方の一つとして,読みを実現する総合的な能力を機能させることを基本とし,説明的文章教材の難易度によって系統を保証するというものがある。しかし,先行研究にはその具体化に踏み込んだものは見られない。筆者は既に,読みを実現する総合的な能力として「論理的認識力」を設定し,その有効性を実践的に明らかにしたが,説明的文章教材の難易度を「論理」の側面から規定する要因については未解明の部分を多く残している。そこで,本研究では説明的文章教材の難易度を規定する要因を明らかにすることを目的とする。この目的の下,平成28年度にはマクロとミクロの視点から,小・中学校国語科教科書所収の説明的文章教材の構造の実相を捉えた。特に,因果関係に焦点を当てたとき見出される階層構造に焦点をあてて,その実相に迫った。研究を進めていく過程で明らかになったことは,次の点である。 ①マクロの視点から見たとき,小学1年生~中学3年生の教材を貫いて「根拠-主張」の論理関係が窺える。/②マクロの視点から見たときに窺える「根拠-主張」(論理)には5つのタイプがあり,難易度を規定する要因の一つになっていると考えられる。/③ミクロの視点から見たときに窺える「基本的な結束性」は6種類あり,教材文を構成する結束性の種類が多いほど,またその構成が複雑であるほど,難易度は高まっていくと考えられる。 /④根拠部には,階層構造および基本的な結束性による構造が確認でき,上の学年の教材になるほど,その構造が複雑になっていく傾向にある。 また,研究を通して,説明的文章教材の構造の表現の仕方についても試行錯誤を重ね,汎用性の高い方法を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度においては,マクロとミクロの双方の視点から,説明的文章教材の構造の実相に迫ることを目標としていた。その目標は概ね達成できたと考える。 それは,研究実績の概要にも示したように,マクロの視点からは5つの論理のタイプ(「論理の型」)を導き出すことができ,ミクロの視点からは「基本的な結束性」を導き出すことができたことが大きい。このことによって,構造の実相に迫るための方法が明らかにできたと考える。 また,「論理の型」によって,読解による論理構築および意味形成の難しさに違いが生じること,根拠部の階層構造および「基本的な結束性」による構造の複雑さによって,読解による論理構築および意味形成の難しさに違いが生じることを明らかにできたことが一つの成果であると考える。 また,多様な構造を表現するための方法を確立することができたことも一つの成果であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,説明的文章教材の構造の複雑さが難易度を生じさせる原因となる理由について,考察を進めたい。複雑であるほど難しくなるという傾向は,ワーキングメモリに関与しているのではないかと考える。そこで,ワーキングメモリに関する知見を援用しつつ,説明的文章教材の構造の複雑さが読解の難しさの原因となる理由について検討を進めたいと考える。 また,平成28年度は構造の実相を捉えるための方法を確立することに注力してきた結果,全ての教材文を分析することはできなかった。今後は確立した方法を使った構造図作成も進めて,理論構築を進めたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査及び資料収集のための出張のうち,他の研究費で賄えるものがあったため,モバイルパソコンなど,当初必要であったが助成決定時の減額により購入を見送った物品の購入に充てようと考えた。しかし,平成28年度中には適当なものが見つからなかったため,平成29年度に購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初必要であったが助成決定時に減額されたために購入を見送ったモバイルパソコンなどの物品を平成29年度に購入する。
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