説明的文章の読解指導に係るスパイラル・カリキュラムを構築する上では,読む行為を実現する基本的な能力群と教材文の難易度を決める要因を明らかにする必要がある。これまでの研究において,読む行為を実現する基本的な能力群として「論理的認識力」を設定した。これは説明的文章の読みにおいて「論理」を手がかりにして,自らの認識を再構成する能力である。論理的認識力を視点にして読む行為を見たとき,説明的文章のどのような特徴が読者に難しさを感じさせるかを明らかにしようとしたのが本研究である。 本年度においては,小学校と中学校の国語科教科書における説明的文章教材を比較し,教材文の難易度を決める要因について検討した。昨年度の研究成果である構造分析の方法を踏襲し,平成28年度版東京書籍中学校国語科教科書に所収の全ての説明的文章教材(全7編)を取りあげ,構造図を作成するとともに,小学校教材と比較した。その観点は,1)論理の型の実態,2)階層構造の実態,3)入れ子構造の実態,4)結束性の実態であった。それら全てについて,小学校教材と似通った傾向が見られ,中学校教材の場合,構造的な複雑さだけが難易度を決める要因となっているわけではないことが示唆された。 そこで,構造図を手がかりにして,意味形成する上での難しさの原因を構造的な複雑さの他から見出そうと試みた。 その結果,1)相対的な論証過程,2)論理指標の明示/非明示,3)ものの見方の縦横な転換,4)論証内容の明示/非明示の実態があり,テキストベースや状況モデルの構築との関係から難易度を決める要因になっていることが示唆された。 今後は子ども読者が意味形成する上でどのような難しさを感じるかの調査を行い,テキストベースや状況モデル構築の手がかりとの関係について考察することが課題である。
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