「数と計算」領域の学習にスペシャル・ニーズのある被験児(者)に教育介入を継続し,先行の介入事例で用いた教材の必要性,有効性,一般性を実証的に検証した。具体的には,先行事例の被験児(ダウン症児でIQ55以下)が約十年間の治療的教育介入の結果達成した数概念の獲得過程(3歳から5歳程度の数認識段階からお金が数えられる段階まで)を知的障がいのある被験者(IQ55以下)で検証した(約三年間の治療的な教育介入の結果)。具体的には,知的障がいのある子どもたちは,繰り返しの学習で百まで数唱することはできるようになっても,従って,例えば十円玉の数と一円玉の数を数えられても,その金額を同定できないという困難を抱えていると一般に言え,この場合,数を概念的に学習できていないと解釈されるわけであるが,その概念的に学習するという過程(数の学習を始める前提となる認識発達は身近なものの概念画が描けるようになること,および,教具「タイル」を用いた四段階の有意味学習による数概念の獲得と,「タイル」上で獲得した数の概念的操作の「お金」への転移という学習の展開)を検証した。 継続の教育介入結果は,すべてデータベースに加える。そのデータベース・システムをサーバーを移し,改めて開設した(http://sup-math123right.org/)。 また,数の学習への準備段階にある子ども,数の学習への導入段階にある子ども,五までの数の学習の段階にある子ども,十までの数の学習の学習の段階にある子ども,十以上の数の学習に進む段階にある子ども,十進法概念の学習段階を経て位取り記数法を理解する段階にある子どもを眼前にした教材例を作成した。これらも,データベース・システムに順次アップする。 なお,教育先進国であるオランダでも,開発したデータベース・システムが主に特別支援学校や特別小学校で活用され得ることを視察し確信した。
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