医療面接の評価方法としては客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination ;以下OSCE)がよく知られている。これは患者とのコミュニケーションスキルを含めた臨床技能・態度を評価する実技試験として、医療系大学でよく実施されているが、評価の公平さの担保や、多大な人手・時間・費用を要する等の課題があり、広く普及には至っていない。そこで本研究では、臨床現場での実習を控えた学生が、タブレット端末の画面上に表示される模擬患者との面接を行うことにより、OSCEのトレーニングを行えるプログラムを開発することを目的とした。本プログラムは模擬患者のアクションに対する被評価者の発言を分析することが特徴である。そこで臨床面接で重要なキーワードを大学病院等の管理栄養士にプロセスレコードを用いてインタビューを行い、抽出した。また、学生がよく用いるキーワードとの違いを分析し、使用フレーズを評価するアルゴリズムを開発した。プログラムでは「診療参加型臨床実習に参加する学生に必要とされる技能と態度に関する学習・評価項目(第3.12版)」を参考に、臨床面接を想定した6カテゴリ別に評価項目を選定し、選択肢による質問を作成した。6カテゴリのうち「コミュニケーション」については模擬患者への発言内容を音声認識、解析し、適切あるいは不適切なフレーズの使用状況で評価を行った。学生28人に本プログラムを実施したところ、学生は、臨床面接の手続きについては理解しているものの、情報収集が不得手であるという実態が明らかとなった。また、本プログラムの使用によりOSCE評価項目のうち「学生が臨床実習開始時に備わっているべき技能」を一定理解・修得でき、臨床実習の事前指導として有効であることが示唆された。
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