高等学校と警察が連携して行うボランティア活動に関して,青森県の「少年非行防止JUMPチーム」,愛媛県西条市の「高校生防犯ボランティアC.A.P.」,熊本県玉名市の「高校生防犯ボランティア組織ボウハンティア」の実践事例について,比較検討した。 高等学校と警察が連携して行う日常性のあるボランティア活動に取り組むことに関して,効果的な実践にするためには,活動地域が地方(非都市部)であることが大きな要因となっていることが推察された。青森県,愛媛県西条市,熊本県玉名市の三者に共通することとして,高等学校の所在地(市町村)と高校生の住所・出身中学校の所在地(市町村)が一致している割合が高いことが挙げられる。 高校生にしてみれば,高等学校の所在地(市町村)の自分の住んでいる場所(市町村)が同一であれば,地域アイデンティティを確立することが比較的容易である。そのため,地域のために活動することに抵抗感・違和感を覚えることがない。警察や地域にしてみれば,物理的にも心理的にも,本当に地元・地域の高校生として認識することができるので,親身になって高校生の活動を支援しようという思いになり,そうした気運を醸成することにつながっていることが考えられた。 その一方で,都市部では,こうした環境確保や活動は困難かもしれないことが示された。私立学校の数が非都市部より比較的多いということ,私立学校では都道府県・市町村をまたいで越境して通学するケースも当然のようにあるということなども関係しているのかもしれないが,高校生にとって地域アイデンティティの確立が難しい側面があるのではないかと考えられる。また,その高校生を支援する警察や地域も対応が難しく,苦慮する部分が多いものと思われる。
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