研究課題/領域番号 |
16K04783
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
辻 宏子 明治学院大学, 心理学部, 准教授 (20374754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 関係概念 / 高さ / 空間認識 / 構成要素の位置関係 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,幼児から義務教育段階の子どもを対象とし,図形の関係概念の形成過程の再検討のための質問紙調査の作成と実施が目的であった.これに対し,次の理由から,小学校第5学年から中学校段階に対象を絞り,調査問題の作成と実施を当該年度の目的として再設定し,活動を進めた. 先の理由として,諸外国の教育課程や図形学習におけるICT利用に関する先行研究の整理の中で,動的幾何環境下の子どもの図形認識において,空間認識の質が課題であり,この空間認識の質は,平面図形での学習に基づく関係概念の形成と,その空間図形への拡張の状態に影響を受けることが推測されたからである.この推測は,研究代表者が当該年度に実施した調査結果からもうかがわれる. 上記の推測に対し,平面図形から空間図形にわたって関係概念の形成及び獲得過程を捉える理論的な枠組みが必要であるが,これは先行研究においてもほとんど見られない.この点に取り組むことは,本研究が目指す成果に直結することから,学習内容として取り上げている小学校第5学年以降の子どもに焦点を当てることとした. 上記の通り目的を変更した平成28年度においては,平面図形の「高さ」概念に関する論考を発表した.論考の結論として,1)どの辺を「底辺」とするかは,図形の配置ではなく,長辺とする傾向が強い,2)1)の背景には,「図形の内部に高さをとる」,「高さ」の作図において「底辺にあたる辺の内部から直交するようにかく」という考えがある.ただし,「底辺に直交する」ということについては明確ではなく,課題が見られた. また空間図形における構成要素間の関係に関する論考を進め,平成29年度初めに発表予定である.論考の結論として,子どもの空間図形における「辺」の認識が他の構成要素よりも低く,このことが構成要素の位置関係の理解に影響している.この背景,及び平面図形の学習との関係は今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べた通り,今後求められる数学教育,特に図形に関する教授・学習におけるICT活用を考えたとき,関係概念の形成過程を,平面図形と空間図形にわたって捉える理論的な枠組みが必要であり,目的を変更したため,進捗状況にはやや遅れが見られるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては,平成28年度の整理を行うとともに,調査結果をもとに平面図形と空間図形にわたって図形における関係概念の形成を捉える枠組みの構築を進める.また,これに対し,現状の教育課程及び教科書における教材及び指導法などとのすり合わせ,課題の明確化を進める.よって,最終的に,枠組み構築に関する論考とICT活用への示唆を含めた図形学習における教材・学習材についての論考を発表することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた物品の購入予定及び旅費が文献調査が活動の中心になったこと,特に調査において利用するPCとして,タブレット式PCの方が必要になり,変更が生じたなど,研究の進捗等に対応して遅れていることから次年度使用額が計上されている.
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次年度使用額の使用計画 |
当初購入予定であった,調査用PCとして,ノートブックではなく,タブレット式のものを購入し,活用する予定である.また,データ数の関係から,当初予定していた人件費を増額することに使用し,円滑に研究が進むよう計画する.
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