研究課題/領域番号 |
16K04784
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三村 隆男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10324021)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キャリア形成 / 教職大学院 / キャリア教育 / 教育管理職教育 / キャリア・パス |
研究実績の概要 |
学校等でキャリア教育を実践することが教師自身のキャリア形成にどのような影響を与えるかについての研究成果を、5月18日NYPI & ARACD CONFERENCE in SEOUL :Career Education and VET(Vocational Education & Training)for Youth in Asiaにて、‘Educational Problems and Career Education in Japan’をテーマに日韓の教員を主としたキャリア教育の実践者によるラウンドテーブルにて公表した。 その後は創設されて10年を迎える教職大学院が教師のキャリア形成与える影響に研究の軸足を移した。日本キャリア教育学会第39回研究大会(上越教育大学)にてシンポジウム「教師のキャリア・パスとしての教職大学院」を企画し、さらに、教職大学院に在籍する学部新卒学生対象に教育管理職教育に関する調査を実施し、回収率49.7%を得て分析を開始した。分析については、12月、早稲田大学主催シンポジウム「教育管理職へのキャリア・パス~教職大学院学部新卒者調査結果(回収率49.7%)から考える~」で速報として途中経過を示し、パネリストの議論や会場からの意見を参考にその後の研究の方針を立てた。 最終的な結果を『教職大学院学部等新卒学生(ストレート・マスター)対象教育管理職教育への志向調査結果報告書』として、共著で発行した。また、分析をもとにした研究の成果を『早稲田大学大学院教職研究科紀要第10号』に「教職大学院の学部新卒学生におけるキャリア・パスの研究Ⅱ-教育管理職養成聞き取り調査や教職大学院学部新卒学生調査をもとに-」としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究を迎え、教師の育成指標としての目安としてキャリア・ステージの研究対象を、教員全般から創設10年目を迎えた教職大学院の学部新卒学生(ストレート・マスター)とシフトし、集約的な研究へと移行することとした。そのため、研究2年目の研究の重点項目についてはそれぞれ以下のように修正を加えた。 「3.キャリアステージにて直面する危機への対応プログラムの開発」については、現在首都圏が直面している教育管理職の減少傾向と、教師のキャリア・パスの上で誰もが直面する教育管理職への選択というキャリア形成上の重要課題に対応するプログラム開発とすることとした。具体的には、教職大学院の学部新卒学生用の教育管理職教育のカリキュラム開発をそれを実現するテキスト作りとした。 「1.キャリアステージの妥当性を裏づけるためのアンケート調査及び教師訪問調査」については、上記の妥当性を検証するため、平成29年度時点で2学年がそろっている全国45の教職大学院の学部新卒学生全員を対象にアンケート調査を実施し、49.7%の回収率を得、特に記述での回答者の4分の3が教育管理職教育に肯定的な姿勢をもっており、カリキュラム開発やテキスト作りに一定の裏付を得た。 「2.キャリアステージ間の移行を促進プログラムの本格的開発」では、前項で実施した大規模調査の定量的及び定性的結果の膨大なデータをもとに、カリキュラム開発及びテキスト作りへの布石を『早稲田大学大学院教職研究科紀要第10号』に「教職大学院の学部新卒学生におけるキャリア・パスの研究Ⅱ-教育管理職養成聞き取り調査や教職大学院学部新卒学生調査をもとに-」としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の対象が教師のキャリア・パスの一つとしての教育管理職を対象に、教職大学院の学部新卒学生を対象とした研究に焦点化し、最終年度として以下の三つの柱立てて行う。 1.教職大学院の学部新卒学生対象の教育管理職教育のカリキュラム開発及びテキスト作成 これは単独ではなしえず、勤務する教職大学院の実務家教員の協力を得て進めていく。2017年度に実施した教職大学院の学部新卒学生調査の膨大な定量的、定性的データをもとに、特に教育管理職への志向性を示した学生が興味を示した授業や実習における項目を検討し、カリキュラム開発、テキスト作りを進める。 2.他教職大学院や教育委員会の聞き取り調査:前項を実施するに当たり、2017年度の調査に協力を得た教職大学院や、特に教育管理職の減少という課題に直面している自治体などを訪ね、具体的に、どのように教育管理職教育を展開することで、学部新卒学生がその後のキャリア・パスにおいて、教育管理職としての意思決定を適切に実施できるか意見聴取を行う。養成段階における教育管理職教育はいまだ例がなく、カリキュラム開発やテキスト作りは最初の試みとして未知の部分が多いため、幅広く意見を聴取し、様々な事態を想定し進めていく。 3.新たな試みに対する海外の教員養成機関における意見聴取:上記の試みについて、米国、英国の教員養成機関で聞き取り調査を行う。新たな試みとして大学院段階の教員養成における教育管理職教育の可能性について、大学院段階の教員養成機関をもつ米国カリフォルニア州立大学バークレー校やソノマ校、また、英国ロンドン大学UCL-IOEを訪問し、幅広く意見聴取を行う。研究の成果は、スウェーデンで開催されるIAEVG(国際キャリア発達学会)にて研究発表を行い、教員養成における新たな取り組みに対し、多くの考えを聴取し、慎重にプログラム開発、テキスト作りに取り組む。
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