研究課題/領域番号 |
16K04788
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研究機関 | 甲子園大学 |
研究代表者 |
金綱 知征 甲子園大学, 心理学部, 准教授 (50524518)
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研究分担者 |
家島 明彦 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (00548357)
戸田 有一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70243376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インターネット / 利用実態 / 匿名性 / 問題行動 |
研究実績の概要 |
匿名性の程度が異なると思われる4種のネット上の問題行動場面(ネット上の掲示板への否定的書込み[匿名]、ツイッターによる炎上投稿[仮名]、ラインのグループチャットにおける悪口の書き込み[仮名・実名]、ライングループにおける仲間外し[仮名・実名])における、①加害者自身の匿名性に対する認識、②被害者からみた加害者の匿名性に関する認識、および③行為の匿名性に関する認識について尋ねる質問紙を作成した。質問紙には上記項目に加えて、携帯電話やスマートフォンの所持の有無と利用の仕方(時間・頻度等)、インターネット利用時の否定的経験の有無を尋ねる項目も含めた。 高校生250名を対象とした調査を実施した結果、高校生85%以上が自分専用のスマートフォンを所持しており、その内の過半数が1日平均0.5~1.5時間利用するという実態が明らかとなった。またインターネット利用時の否定的経験として、過度な利用に伴う集中力低下(51.5%)、寝不足(29.7%)、ネット/ゲーム依存(24.5%)が挙げられたが、LINEによる悪口(3.5%)や仲間外し(1.3%)、その他のトラブル(5.7%)など対人トラブルについては相対的に低い割合であった。 匿名性の程度が異なる4種のネット上の問題行動場面については、加害者自身の匿名性の認識、被害者からみた加害者の匿名性に関する認識、行為の匿名性に関する認識のいずれについても、ツイッターを用いた炎上投稿が最も匿名性が高く、LINEのグループチャットにおける悪口の書き込みが最も匿名性が低いという認識であることが示された。 これらの結果を踏まえ、今後、匿名性の程度に関する認識の違いが、加害行為の促進要因とされている道徳不活性化の程度や、被害への予防意識に与える影響について検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、匿名性の程度が異なると思われる4種のネット上の問題行動場面における、①加害者自身の匿名性に対する認識、②被害者からみた加害者の匿名性に関する認識、および③行為の匿名性に関する認識について尋ねる質問紙を作成し、中学生、高校生、大学生を対象に調査を実施する予定であった。 質問紙作成には、調査対象の中心となるであろう高校の生徒や教員にも意見をつのり、携帯電話/スマートフォンの所持や日常の利用の仕方等についてたずねる項目も追加した。質問紙の作成を丁寧に行ったため当初予定していたよりも多くの時間を費やすこととなり、調査実施において当初の予定よりは小規模の対象に対する調査に留まった。しかしながら、調査実施に向けた対象校との調整は進めていたため、持ち越した調査は今年度速やかに実施できるものと考えている。 また、当該テーマを専門に研究する海外の研究者を招聘し、これまでの研究成果についての詳細な聞き取りと、将来的な国際比較研究の可能性について検討できたことは、今後の研究を進めるにあたって大変有意義な示唆を得るものであった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度調査の結果を踏まえ、今後は匿名性の程度が異なる4種のネット上の問題行動場面における匿名性への認識の違いが、ネット上の問題行動を促進すると考えられている道徳不活性化の程度や、被害に対する予防行動につながる予防意識の程度にどのような影響を与え得るのかについて検証するための質問紙を作成し、高校生、大学生を主な対象として調査を実施する予定である。 また同対象に対して28年度調査も合わせて行うことで、匿名性の認識に関するデータと、道徳不活性化および予防意識に関するデータの同程度の収集を行い、相互関連性の検討を目指す。 また28年度調査および29年度調査の成果を国内外の学会にて発表するとともに、主要な学会誌に研究論文を投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度実施調査のデータ処理等にアルバイトを雇用予定であったが、調査実施そのものが小規模に留まったため、アルバイト雇用の必要がなくなり、アルバイト謝金として予定していた金額が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、翌年度請求分と合わせて、当初予定通り、データ処理等のアルバイト雇用のための謝金として使用する予定である。
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