研究課題/領域番号 |
16K04788
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
金綱 知征 香川大学, 教育学部, 准教授 (50524518)
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研究分担者 |
家島 明彦 大阪大学, 全学教育推進機構, 講師 (00548357)
戸田 有一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70243376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネット問題行動 / 匿名性信念 / 道徳不活性化 |
研究実績の概要 |
平成28・29年度に実施した①携帯電話/スマートフォンの一般的な利用実態、匿名性の程度が異なると思われる4つのネット上の問題行動場面における②匿名性の水準に関する認識、③上記4場面における道徳不活性化の程度の3点についての継続調査、及び上記①~③の相互関連性について検証した。具体的には、上記①の結果から調査対象者をSNSの利用頻度の高い「SNS群」、オンライメディアの利用頻度の高い「メディア群」、両方高い「両高群」、両方低い「両低群」の4群に分け、ネットへの依存傾向、匿名性に関する信念、ネット上の被害に対する不安、道徳不活性化、及びネットいじめ被害及び加害への関与の程度について検証した。 平成30年度は、中学生60名(1中学校)及び高校生770名(2高等学校)の計830名を対象に無記名自記式質問紙を用いた調査を実施。但し、先述のネット・スマホの利用傾向ごとの各種要因に係る分析については、平成28・29年度に収集した有効回答データ(中学生1,227名、高校生1,223名、計2,450名)を分析に用いた。 ネット依存傾向、匿名性信念、ネットいじめ被害・加害関与経験のいずれについても、SNSとメディアの両方の利用が高い「両高群」は他の群よりも高い値を示していた。一方、被害不安については、両低群が最も高い値を示していた。これらの結果から、ネット利用の際のコンテンツの違いによる影響は少なく、内容に問わずネット利用の時間や頻度が高いものは、相対的に高いリスクに晒されていることが示唆された。 今後、平成30年度収集データを加えて、各問題場面における匿名性の水準に対する認識、道徳不活性化の水準、ネットいじめ被害・加害関与経験など各要因間の関連性についてさらに詳細な分析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の当初計画では、平成28~29年度実施の調査によって得られたデータを基にネット上での問題行動場面における匿名性に対する認識と、リスク認知、被害不安、道徳不活性化等のネット上の問題行動関与リスク関連要因との相互関連性について多変量解析を用いたモデルで検証する予定であった。当初計画の遂行に必要なデータの収集はできているが、平成28~29年度調査の協力校の一部より、平成30年度の継続調査の実施の依頼があったことから、本年度も当該校にて調査を実施するに至った。そのため、各要因の相互関連性の検討に当たっては、平成28~30年度の3年間のデータを用いて検証することとし、現在、検証を進めているところである。 また上記検証結果を含む本課題研究の成果を平成31年6月に開催予定である「国際反いじめ専門会議(World Anti-Bullying Forum)」にて発表する機会が得られたため、本補助事業期間の1年延長のための申請を行い承認をいただいた。 すべての補助事業は今年度中に完了する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28~30年度の調査で明らかとなった匿名性の程度が異なる4種のネット上の問題行動場面における匿名性に対する認識の違いが、ネット上の問題行動を促進すると考えられている道徳不活性化の程度や、被害に対する予防行動につながる被害リスク認知や被害不安の程度にどのような影響を与え得るのかについて相互関連性を検証する。 また合わせて調査した、生徒の日常的な携帯/スマホおよびインターネットの利用実態と、匿名性に対する信念や道徳不活性化の程度との関連性についても検証し、ネット上の問題行動への関与リスクに関する説明モデルを検討する。 なお本補助事業の成果は、国内外の主要な学会での口頭発表及び学会誌論文や書籍等での発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度実施調査のデータ処理にアルバイトを雇用する予定であったが、調査協力校における調査票の回収に遅れが生じたため、データ処理分のアルバイト謝金として予定していた金額が次年度使用額となった。 次年度使用額の使用計画については、補助事業期間延長申請が承認されたため、平成31年度に当初予定どおりデータ処理等のアルバイト雇用のための謝金として使用する予定である。
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