研究課題/領域番号 |
16K04792
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
三木 澄代 奈良学園大学, 人間教育学部, 非常勤講師 (30633705)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保育者 / 教育者 / 専門性 / 共感性 / 被受容感 / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、保育者の専門性としての共感性について、その態様を文献ならびに実態調査から考察し、それをふまえて保育者(保育士・幼稚園教諭・保育教諭)養成機関の教育において効果的に専門性としての共感性を育む授業モデルを構築することである。本年度の研究の成果としては主として以下の2点である。 まず、研究の基盤となる「共感性」の構成概念・構造について先行研究を収集し文献研究を進めた。その成果として、ミラーニューロンに代表される生理学的側面からの理解、心の理論に代表される心理社会的側面からの理解をふまえた共感性の概念構成が必要であることが理解された。ただし、保育者養成機関における授業として生理学的介入を行うことは困難であるため、心理社会的側面、中でも個(自己-自己)と他者と共に存在する自己(自己-他者)の視点からアプローチすることが妥当であることが示唆された。 次に、これらを踏まえ、保育者の専門性としての共感性の態様を考察するための手かがかりを得るため、現職の保育・教育者(保育士および幼・小・中・高教員)を対象とする質問紙調査を実施した。 実施対象は、兵庫県西播地区の2市の公私立保育園・幼稚園・小学校・中学校・高等学校の保育士・教員計935名で、その内訳は、たつの市:公私立保育所(園)・認定こども園の現職保育士・教諭344名、宍粟市:公私立保育所(園)・認定こども園の保育士・教諭102名、小学校教諭209名、中学校教諭120名)、西播地区の高等学校教諭160名で、回答回収率は全体で80.8%であった。なお、調査対象の拡大にともなう実施時期の幅が生じ回収完了が計画時より遅延した(3月末)ため、結果の分析・考察ならびに授業デザインについて検討は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず初めに、文献研究については、共感性の概念ならびに共感性との関連が予測される内的要因、保育者・教育者の共感性の育成に関する先行研究を収集し、質問紙の内容を検討し構成した。質問項目は、多次元共感性尺度(鈴木・木野,2008)、被受容感・被拒絶感尺度(杉山・坂本,2006)、日本語版ソーシャル・サポート尺度(岩佐・稲垣,2007)に身体感覚に関する質問(5項目)を加えた計74項目とした。 次に質問紙調査については、当初、保育士・幼稚園教諭を調査対象としていたが、対象児の年齢(発達段階)による比較をとおしてその特徴をより明らかにすることができるように、小学校・中学校・高校の教員も調査対象とした。調査時期については、12月中に回答の回収が完了する予定であったが、実施対象の範囲を小中高に拡大したこと、連動して実施依頼対象校の承諾を得られる時期が一律でなく、回収が遷延したため(データ入力完了が4月末となり現在分析中である)。 また、不測の所属機関変更に伴い、申請時に予定していた調査・実践研究の対象(大学生)ならびに授業科目を確保することが困難となり延期を余儀なくされたため。今年度実践研究が可能な所属機関に異動し、実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、絵本を用いた身体感覚の概念化のワーク実施前に大学生対象の質問紙調査を実施し、昨年度実施した現職の保育者(保育士・幼稚園教諭)・小中高教員の調査結果と発達や現職の保育・教育共感性の態様を比較し、養成すべき要素について考察する。 次に、絵本を活用した身体感覚の言語化ワークを実施し、ワークにそれによる共感性の変容を把握する。また、実施対象・授業の確保が可能であれば、ワークの有無、ワーク後のピア・サポート体験の有無、保育実習前後の比較も行う。これらにより、身体感覚の言語化ワークが共感性・自己受容・被サポート感の変容に及ぼす影響を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートパソコン、プロジェクター、教材呈示機器が若干安価で購入できたこととあわせて、所属機関の異動により予定していた授業実践が延期となったことから諸経費として見込んだ予算を支出しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
授業実践に要する教材(絵本)、所属機関異動による事務用品の購入等に充当する。
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