研究課題/領域番号 |
16K04795
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研究機関 | 貞静学園短期大学 |
研究代表者 |
笹川 康子 貞静学園短期大学, 保育学科, 教授 (10554222)
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研究分担者 |
石井 雅幸 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (50453494)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 幼小接続 / 領域「環境」と理科教育の接続 / 保育者養成 / 小学校教員養成 / シングルエイジの科学的探究心育成 / シングルエイジの論理的思考力育成 / 科学的リテラシーの育成 / 教材開発と指導法開発 |
研究実績の概要 |
「科学的なものの見方や考え方」は幼児期からの連続した科学教育によって習得され、高等教育への基礎となる。そのため保育現場での領域「環境」と小学校教育における「生活科」「理科」との円滑な幼小接続が非常に重要である。保育者養成課程の学生には小学校理科教育を見据えた指導力が必要であり、小学校教員養成課程の学生には保育現場で子どもが積み重ねてきた原体験を理解し、子どもが培ってきた「興味・関心」を確実に「科学的探究心・論理的思考力」の獲得へと橋渡しすることのできる能力が必要となる。本研究では、幼児教育から高等教育までの連続性を見据え、「エネルギー」「粒子」分野から「光の性質」、「空気と水の性質」、「生命」「地球」分野から「生物と環境」、「昆虫と植物」を選び、養成課程在学中に扱う教材・指導法の開発を目指している。 平成29年度は「光の性質」の分野における研究成果を日本保育学会第70回大会(2017年5月川崎医療福祉大学)において発表した。学生が教育歴の中で蓄積してきた「光の性質」に関する知識について調査し、小学校理科教育「光の性質の単元」への接続を図る教材と指導法について報告した。これを基にアクティブ・ラーニング型授業実践を行い、その成果を日本教科教育学会第43回全国大会(2017年9月北海道教育大学札幌校)において発表した。論文としては、「光の性質」に関して日本教科教育学会全国大会論文集で報告し、幼小接続を主眼として「幼児期の原体験がその後の生活科や理科での学びにどのように影響しているか」について子ども総合研究 大妻女子大学家政学部児童学科オンライン・ジャーナルNO.3で発表した。また学生の科学的リテラシー育成と、自らの学びが子どもの今後の理科教育・数学教育への接続に寄与するという意識を持たせるための具体的授業実践について貞静学園短期大学紀要 第9号において提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実践研究として計画していた幼小接続のための保育者養成・小学校教員養成課程学生に必要なカリキュラム作成、獲得すべき学習成果のための教材と指導法の開発、授業実践と検証についてはおおむね順調に進んでおり、研究成果を学会・論文発表として行うことができた。基礎研究として保育者養成・小学校教員養成課程学生の原体験調査・分析も実施した。並行して中学校から高等教育における生徒・学生の科学的リテラシー育成に関する諸問題や諸外国の幼児教育の取組み等の文献研究も進めている。 「生物と環境」については「動物の生態系」の指導法開発に続き「森林の機能と保全の理解」に関して「小学校理科教育、さらには算数教育への接続まで視野に入れた木を用いた保育教材・指導法の開発」を行ってきた。「生物と環境」及び「昆虫と植物」の取組みとして自らの学びが子どもの理科教育・数学教育への接続に寄与するという意識を高めるため「生物の形づくり」に着目し、軟体動物、節足動物、脊椎動物等の特徴を簡単に理解できる模型づくりや動植物の形に見られる法則性を学ぶ教材と指導法の開発・授業実践も行った。「光の性質」では、養成校の学生の基礎的理解について実態調査を実施し、それをもとに教材・指導法の開発を行い授業実践に入っている。「光の性質」は非常に重要な内容であるが、小学校理科における単元としては扱いが少ないため、幼児教育期の「光の性質」の原体験は非常に重要である。小学校教員養成課程の学生は、幼児教育における原体験があるからこそ生活科・理科の授業においての生徒の理解に結び付くことを理解してほしい。「空気と水の性質」では、目に見えない空気の存在と性質について遊びを通して科学的な原体験を積むことができる。児童館等での出張授業を通じ、小学校低学年児童に対して「空気の性質」の授業を実施し幼小接続について考慮すべき視点を研究している。
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今後の研究の推進方策 |
卒後すぐに保育・教育現場に立つ養成校の学生が、シングルエイジの子ども達に「科学的なものの見方や考え方」を育成することのできる指導力を在学中に獲得すべく、その指導法について研究を続けていく。学生が教員として子どもに対峙したときに必要とされる科学的リテラシーの育成について研究を行っていく。特に幼児教育、初等教育においては日常の活動や教育において関わる教員が限定されているため、教員個々の資質の向上が必須である。本研究では幼児教育から高等教育までの連続性を見据え、的をしぼって教材・指導法の開発を行っていく。授業での取組みから、学生が子どもの興味・関心に気づく力、それを発展させていく力を獲得できれば、卒後、保育現場で汎用的に目の前の子どもの興味・関心に併せて教材を考え、意図的にしかけていく能力を身につけさせることができると考える。一方小学校教員養成課程の学生には、保育現場で子どもが獲得してきた「科学的思考力の芽生え」をしっかり把握して、自ら「興味・関心」を持って意欲的に理科の授業を運営する力を持たせるため、理科に対する苦手意識へ配慮した教材・指導法の開発を行っていきたい。 21世紀を生き抜いていくためには、すべての子どもに科学的探究心、論理的思考力を持たせることが必須であり、これが日本の科学力の下支えをする国民としての意識形成と科学的な生き方につながる。諸外国の取り組みについても文献研究を続け、教材と指導法の開発、授業実施を行っていきたい。 なお、実際の保育現場や小学校教育現場に対する領域「環境」と「生活科」「理科」の調査研究は学校理科での教材提示が教科書記載によりかなり限定されていること、また保育現場での活動は各施設、幼稚園での裁量が大きいことが課題であると考えている。また平成31年度より学習指導要領の改訂が行われることも視野に入れ、研究しなければならないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
記録用ビデオカメラ、実験用実体顕微鏡ならびに多種の拡大装置等購入が30年4月にずれたこと、ならびに調査研究実施が伸びたこと等によるため、30年度に速やかに実施する予定である。
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