研究課題/領域番号 |
16K04796
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研究機関 | 名古屋短期大学 |
研究代表者 |
高須 裕美 名古屋短期大学, 保育科, 准教授 (80413285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子どもと歌 / 即興表現 / 指導法 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、主として平成28年度の研究の中間報告及び関連する課題についての2つの研究を行った。 一つ目は、即興的な歌が活発な子どもの保護者は、子どもの歌をどのように聞いているのか、そしてどのような保育観を持つのか保護者の受容を質的に検討した。具体的には、子どもの声、保護者の受容、保育観、習い事、家庭での音楽環境について5点の成果を整理した。子どもの作り歌は、家庭ではリラックスした環境の時に頻繁におこること、また音楽の習い事とは比例しないことも考察した。これらの結果は、就学前施設において、「一斉に歌う」以外の時間を再考する知見ともいえる。 二つ目は、家庭における子どもの表現についての国際比較研究である。日本の子どもと米国ニュージャージー州の5歳児へのインタビュー比較を行い、自分自身の自己表現をどのように説明できるのか,どのような歌を家庭で歌っているのか、両親の聴く音楽や、マスメディアの影響などについて調査した。ニュージャージー州のケースでも日本と同じようにマスメディアからの影響が強いこと、コンピュータデバイスに関しては、日本の親の方が子どもの使用に保守的であることなども考察した。この二つの研究と、学会に参加して先行研究の最新の報告も収集した。APSMER, ISPS,およびPeceraにて、海外の研究者の即興的な音楽活動に関する研究の様子を見ることができた。また、本研究を深めていくためのフレームワークについていくつかの助言も受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度科学技術研究費事業交付申請書に作成した平成29年度の研究実施計画については、当初の予定通り先行研究の検討、および国際比較をおこなっている。子どもの音楽行動に関するインタビュー内容と長期観察報告、即興的な作り歌における日本の子どもの音楽行動をクリップでまとめ、3件の幼児教育・音楽教育の国際学会で、口頭発表とポスター、国内で1件にて学会発表した。また、その成果を踏まえて論文を執筆することによって、今後研究を推進するための問題状況を明確にすることもできた。 現在のところ、国外の5名の研究者らの意見や先行研究を取り入れながら、研究計画を遂行している。なお、2年目に計画していた具体的な評価課題の計画については、子どもの作り歌の音声を分析することによって、何に影響を受けたものなのかリズムとメロディの側面から評価することができた。しかし、国際的に発信することを見込み、国内だけではなく、海外の資料収集や知見さらに必要であり、学会出席や研究会を機会に他の研究者とも意識的に意見交換を行う。 やや遅れていると判断した点は、実際の指導法実践のを試行的に実践することができなかったため、その課題をまとめることができなかった。実践的な検討が不可欠であることから、これに関しては、次年度の研究計画の中で、方向性を明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、即興的な表現の指導法に関わる実践研究の最終年度にあたり、これまでの成果を考察したうえで、先行研究にて収集した子どもの即興的表現につながる指導法のフレームワークを参考に、日本の教育に合ったものにするための課題を検討する。また音楽的アイデンティティや、伝統的な音楽の側面との関係性を明示するための論文も作成する。そのため、平成29年度までに収集した論文資料や、日本やアメリカでの取材資料をまとめていく必要がある。 子どもの即興的表現は、つぶやき歌や、パロディ、自作の歌といった、子どもの表現力を映し出す表現活動であるとして研究の中でとらえているが、自由な時間における保育者の言葉や声での音楽的な応答のモデルを提示すること、一斉活動においては、指導者が子どもと、どのようにディスカッションしながら歌づくりを実践し、子どもの内的心情を引き出しながら新しい音楽を作っていくのか、また、子どもの創造的なモティベーションを育てる研究も視野に入れて取り組む。また、本研究で明らかになったオリジナリティのある部分をまとめて、音楽教育の世界大会において発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声の分析に関わるソフト購入、IC機器の購入予定が実施できておらず、これに関しては、購入予定のメーカーの試供などを終えてから次年度に購入するということで見送った。また海外からの文献取り寄せを実施できず、次年度に実施する予定である。さらに年度末の海外出張に関して、現地で使用した旅費の精算がすべて終了していないことも使用額に差額が生じた理由である。なお、予定していたフィールドワーク先の実践者との時間調整ができず,実践観察が1か所のみになってしまった。この実践観察は,次年度に引き続きおこなうこととした。また、次年度使用額の使用計画である実践観察については小学校低学年も含めて、平成30年度の6~11月中で調整中である。子どもの即興的な音楽表現教育に意欲的な実践校や就学前施設を選んでいる。
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