本年度は研究最終年度として、下記の内容を図書としてまとめた。子どもの即興的な歌は、自由遊びを含む日常生活の中で聴いている音楽を様々な言葉やフレーズに作り変えて、繰り返し表現されているをことを明らかにした。即興的な歌は、長くなればなる程、リズムが複雑でメロディーにも高低感を多く含んだものになっている。また、家庭での音楽環境の調査を行い、マス・メディアに大きく起因した歌が増えていることも考察した。子どもの即興的な音楽行動が、何に起因しているのかということについては、音楽に関わる習い事のような学びの中だけではなく、日常生活の音楽環境から大きく影響を受けていることを明らかにしている。 子どもの音楽性は、雑多な音環境の中で言葉と同じように育っているが、指導者や養育者などにより「聴く」ことを注視するような指導があってこそ、音への意識が育ち、それを受容することによって自分らしく模倣したりすることができることを質的研究によって検証した。次に、音楽的な対話や、母語のリズムを交換したり、変化させたりするような音楽や言葉の活動が、さらに自分も発信したいという思いを芽生えさせており、子どもの即興的な音楽表現は、母語の関わりと切り離して考えることができないと言葉との連関も明らかにした。 5-6歳児の即興的な歌作りを好む子どもの保護者に依頼していた即興的な作り歌の録音データを収集し、音声分析調査をもとにした論文を、日本の子どもの作り歌の様相として提供し、ノルウェーの研究グループと共同研究を進め、日本の子どもの音楽行動と、指導法について比較した。
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