研究課題/領域番号 |
16K04797
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研究機関 | 常磐会短期大学 |
研究代表者 |
高橋 一夫 常磐会短期大学, その他部局等, 准教授 (10584170)
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研究分担者 |
糠野 亜紀 常磐会短期大学, その他部局等, 准教授 (60342268)
平野 真紀 常磐会短期大学, その他部局等, 教授 (70342201)
白波瀬 達也 常磐会短期大学, その他部局等, 准教授 (90512385)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 素話 / 言語表現 / 粘土 / 造形表現 / 集中力 / 想像力 / 創造力 / 子ども |
研究実績の概要 |
保育現場において、絵本などを活用せずに保育者の語りだけで成立する「素話」は、子ども達の豊かな想像力を養うことができる非常に重要な言語表現活動である。また、粘土を活用した造形表現活動は、特に子ども達の指先を中心とした触覚を強く刺激することができ、創造力を養うことができる大切な活動である。 ところが、この2つの活動は、保育者に高度な指導力が求められ、さらに活動のための準備にも多大な時間が必要になるという特徴を持っている。そのために、単独の保育活動としては保育者から敬遠される傾向にある。 そこで本研究では、保育者に掛かる過度な負担の軽減を図るために、「素話」と粘土を活用した造形表現活動を組み合わせた保育活動案を新しく提案し、その保育活動案の有効性の検証を研究目的としている。保育活動案の骨子は、「素話」を聴いた後に、その内容に関連するものを粘土で造形するというものである。 1年目の研究実績として最も大きいものは、実際の保育現場において5歳児を対象に、「素話」と粘土の造形表現活動を組み合わせた保育活動案を実践でき、その効果について分析がおこなえたことである。 実践の結果、子ども達は約10分間の「素話」を集中して聴くことができただけでなく、その後の粘土の造形表現活動にも集中することができ、全体で約40分間の活動時間全体を積極的に過ごせることが明らかになった。その理由には、子ども達の想像力と創造力の高まりがあると考えられる。つまり、単に「「素話」を聴く」や「粘土を造形する」といった単独の活動ではなく、「「素話」で聴いた内容を粘土によって表現する」という一連の活動であるため、非常に高い集中力が必要とされた結果、子ども達の物語を理解するための想像力と、粘土を使用して表現する創造性が著しく向上し、長い活動時間を有意義に過ごすことができたのだと指摘できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展している。 その理由は、研究実績の概要にも記した通り、1年目の研究実績として、実際の保育現場において、「素話」と粘土の造形表現活動を組み合わせた保育活動案を実践でき、その効果について分析をおこなえたことである。 調査実験において、小学校への就学直前の5歳児クラスで実践した結果、「素話」を聴く子ども達の集中力も、粘土を使った造形表現活動時の子ども達の集中力も非常に高い状態で維持されることが明らかになった。つまり、提案した保育活動案を年長の子ども達が楽しめることが実証されたといえる。 また、「素話」の準備に掛かった時間や、粘土の造形表現活動の準備に掛かった手間などを総合して勘案すると、保育者に掛かる負担に見合った保育活動であることがわかった点も研究が順調に進展していると判断した理由である。 次年度以降も、交付申請書に記載した研究実施計画に沿って研究をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進捗方策としては、交付申請書に記載した研究実施計画に記載した通りの実証実験と分析を行うことである。現時点で予定通り研究が進捗しているため、研究計画の変更などは考えていない。1年目の研究体制で継続して研究活動を行う予定である。 特に2年目の研究は、実施計画にも記載した通り、粘土の造形表現活動で使用する粘土を「土粘土」に替えて実証実験をおこなうことを重視している。 1年目に実施した実証実験では「油粘土」を利用した。これは、保育現場で提案した保育活動案がスムーズに実践できることを念頭に置き、保育者と子どもが慣れ親しんでいる「油粘土」での実証実験が適切であると考えたからである。 しかし、粘土の造形表現活動の視点から考えれば、子ども達の手の触覚を豊かに刺激するためには、やはり「土粘土」の利用を考えたい。「土粘土」の利用には専門性が求められ、保育者に掛かる負担が高くなることを念頭に置きつつ、実際の保育現場で実践が可能な保育活動案にまで昇華するためにはどのような方策が必要になるのかを分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表を予定していたが、学内業務の関連で共同研究者が参加できない事象が生じたため、旅費に充てていた助成金が翌年度分として請求することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金については、学会発表のための旅費に充てるほか、研究上必要な費目に割り当てる予定である。
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