研究課題/領域番号 |
16K04799
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 司 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30300528)
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研究分担者 |
宍戸 道明 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30509675)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エンジニアリングデザイン教育 / 再資源化 / 漂着ごみ / 再生プラスチック / 流木炭 |
研究実績の概要 |
漂着ごみの発生源と時期を明らかにするため山形県庄内地方における沿岸部や河川敷のごみの著しい地点において100mを見渡し平均的にごみが散乱している個所における区間10m×10mに漂着している流木・海草を除く人工系海岸漂着物等量を回収した。ICC(International Coastal Cleanup)データカードに基づいてごみの分類を行った。どの回収地点においても欠片(プラスチック、シート、発泡スチロール)が圧倒的に多いことがわかった。河口付近での総ごみ量は20L袋の約1杯分(ランク3)から2杯分(ランク4)であった。河口から離れた地点においては1/4杯分(ランク1)であり漂着ごみの発生する場所は特定の地域に偏っていることが分かった。 プラスチックごみの成分分析を赤外吸収スペクトル分光器(FTIR)および示差走査型熱量分析(DSC)によって行った。その結果、プラスチック製品の多くはポリエチレン,ポリプロピレン、ポリスチレンが主な成分化合物であった。長尺物である漁網についてもポリエチレン製もしくはポリエチレンとポリプロピレンの複合物であった。漁網から再生プラスチック製造を試みた。漁網を洗浄、裁断、溶融,熱プレスにより成形品を作成し強度試験を行った。ポリエチレン製漁網を原料とした場合では引っ張り強度は最大で25MPa、弾性率は1000MPa程度であり汎用性樹脂と同程度の力学的性質を示すことを確認した。 流木炭化物の性質やその応用を検討するため流木を所定温度で炭化した。炭化物の表面は多孔質構造であることを電子顕微鏡により確認した。ヨウ素吸着表面積法(JIS法)やBET窒素吸着法によると流木炭の比表面積は100平方mであり活性炭ほどの表面積は得られなかった。活性炭に比べて特定の重金属イオンを吸着する性質がある事を確認したので水浄化剤としての機能が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山形県庄内地方における沿岸部や河川敷における漂着ごみ現況調査を行い、ICC(International Coastal Cleanup)データカードに基づいてデータ収集できた。ごみの種類を分類化した。ごみ総量からごみ量のランク付けができた。その結果より漂着ごみの発生する場所は特定の地域に偏っていることが分かった。 プラスチックごみの成分分析を行った。その結果プラスチック製品の多くはポリエチレン,ポリプロピレン、ポリスチレンが主な成分化合物である事が分かった。漁網から再生プラスチック製造を実施し、成形品の引っ張り強度は最大で25MPa、弾性率は1000MPa程度であり汎用性樹脂と同程度の力学的性質に達成する条件を把握できた。 流木炭化物の表面は多孔質構造であることを確認できた。ヨウ素吸着表面積法(JIS法)やBET窒素吸着法によって流木炭の比表面積は活性炭ほどの表面積にはならなかったものの活性炭に比べて特定の重金属イオンを吸着する性質がある事を確認した。今後水浄化剤としての価値が予想されることから新たな研究展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度より本校でのエンジニアリングデザイン教育に漂着ごみ対策をテーマにした学生による工学的解決方法の導入を図る。活動は機械、電気電子、制御情報、物質工学の4学科混成(学科横断型)によるグループワークを主体とする。地域との連携活動重視の点から、自治体との意見交換、地域住民との共同作業などを通じた活動を展開していく。 ごみの現況調査については、近年マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な懸念となっていることから庄内地域の海岸での状況調査に向けた予備調査を行う予定である。また季節変動による漂着状況についても調べる必要のある事から定点観測を実施する予定である。ごみの効果的回収方法、再資源化・再利用方法,を学生活動の中からデザインする。 沿岸部での合宿活動を行いフィールド調査や現地の実情に合った制作活動の充実を図る。多角的な解決手法の涵養のため、有識者、自治体などによる講演会を実施する。成果物については、地域関係者に向けた報告会(プロポーザル)を行い適宜アドバイスを受けながら改善点をフィードバックする。
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