新しい漢文教材の例の1つとして、黄梅調映画『梁山伯与祝英台』を取り上げた。1963年に国泰により製作された黄梅調映画『梁山伯与祝英台』は、中国四大民間伝説の一つである「梁山伯と祝英台」を映像化したものである。その歌はわかりやすい文語調になっているため、漢文教材に適している。研究成果は、論文「映画『梁山伯与祝英台』を漢文教材にする」(『大東文化大学紀要(人文科学)』57号、2019年3月)において公表した。 現代の漢文教育の参考とすべく江戸時代の漢文教育の実例を研究した。具体的には、懐徳堂における復文(書き下し文を漢文に直す練習)や漢作文の様子を調査した。研究成果は、論文「懐徳堂における漢作文実習」(『 中国研究集刊』64号、2018年6月)および論文「懐徳堂末期の漢文教育―並河寒泉『課蒙復文原文』、並河蜑街『復文草稿』を中心に」(『大東史学』1号、2019年3月)で公表した。 論文「懐徳堂における漢作文実習」では、並河寒泉『文通』に見える漢作文に対する考えを確認した上で、和文の史談を漢文に直す練習がされていた様子を具体例を挙げて紹介した。 論文「懐徳堂末期の漢文教育―並河寒泉『課蒙復文原文』、並河蜑街『復文草稿』を中心に」では、並河寒泉『課蒙復文原文』、並河蜑街(たんがい)『復文草稿』(共に大阪大学懐徳堂文庫蔵)を中心に、懐徳堂終末期における復文練習および漢作文練習の様子を紹介した。復文については、教材は類書の『淵鑑類函』から多く取られていること、その内容には懐徳堂および寒泉の特徴が見られること、原文の完全な復原を目指すものではなかった点を明らかにした。漢作文については、教材は、すでに指摘されていた『常山紀談』などの軍記以外に、『窓のすさみ(追加)』などの随筆や懐徳堂の逸話なども使われていたことを明らかにした。
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