研究課題
H29年度は前年に引き続き、北海道大学病院小児科・精神科外来にて延べ30名程度の限局性学習症と診断される児童をリクルートしてきた。全例について臨床表現系としての各種検査(WISC-IV、音読検査など)を行ってきた。また認知・知覚的表現系については音韻処理課題の準備を行い、眼球運動機能検査についてもGazefinderを用いた課題を作成した。またDTVP-3を海外から購入し、今後は標準データの取得を含めて検討していく予定である。またタブレット機器とタッチペンを用いた書字評価ソフトウェアの開発を行った。今後は微細運動困難を原因とする書字障害児の評価方法を確立する予定である。脳神経基盤研究については20名以上のディスレクシア群および14名の対照群で音読時の脳活動について脳磁図を用いて測定した。現在これによって得られた結果からは、無意味単語音読時の左側頭葉上側頭部の活動低下、有意味単語音読時の左下前頭葉の活動低下、さらに絵の呼称時に右下前頭葉の活動亢進が明らかとなった。特に絵の呼称時の脳活動の違いは、読字障害をもつ子どもたちが、文字だけでなく視覚刺激に対する反応が異なることを示しており、視覚刺激にて通常と異なる脳内経路を使用していることが示唆された。一部の研究では読字障害をもつ人は、視覚的・空間的な把握能力に優れているという報告もなされており、本研究で得られた結果は、こうした脳活動のそもそもの違いを示しているのかもしれない。今後はさらに音韻認知、意味認知に特化した課題により、より本質的な脳神経機能について研究を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
H29年度は前年に引き続き、北海道大学病院小児科・精神科外来にて延べ30名程度の限局性学習症と診断される児童をリクルートしてきた。全例について臨床表現系としての各種検査(WISC-IV、音読検査など)を行ってきた。また認知・知覚的表現系については音韻処理課題の準備を行い、眼球運動機能検査についてもGazefinderを用いた課題を作成した。またDTVP-3を海外から購入し、今後は標準データの取得を含めて検討していく予定である。またタブレット機器とタッチペンを用いた書字評価ソフトウェアの開発を行った。これらの臨床データについては、一定数集まったことからデータクリーニングを行い、今後臨床表現型からのサブグループ化を進めていく。脳神経基盤の研究は一定の成果が得られたため、今後データをまとめ結果を公開する予定である。
サブグループ化を行う上で一定程度の人数をリクルートできたため、今後は研究分担者と協働し読字や書字についてのデータをクリーニングし、サブグループに着目したさらなる評価方法の開発を進めていく。主訴が学習困難である児童だけでなく幅広い層から抽出を行っていく。さらにサブグループ化された症例への介入を進めていく予定である。認知表現系については、DTVP-3の日本語版の標準化を同時進行する予定である。より先進的な視覚認知および上肢微細運動の評価ツールとして活用できると考えている。また現在開発を終えたタブレットとペンデバイスを用いた書字評価方法は、微細運動障害に起因する書字の困難をもつ場合に指導効果も評価できるツールとなる可能性があり、これらを用いた一部症例の検討を開始していく。脳神経基盤研究については現在、音韻処理および意味処理課題を作成中であり、今年中にはこれらの脳活動測定が可能となる予定である。視覚表象に対する脳内プロセスを明らかにすることができると考えている。上記3分野で多層的な研究を発展させていく。
当初予定した、眼球運動測定装置の購入において別予算にて購入が可能となったため使用額が減少した。また人件費は今後、介入およびサブグループ化の段階で使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Clinical Neurophysiology
巻: 129 ページ: 1182-1191
10.1016/j.clinph.2018.03.007
精神科
巻: 31 ページ: 131-134