研究課題/領域番号 |
16K04803
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
阿部 美穂子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70515907)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 障害児のきょうだい支援 / 障害児の家族QOL / きょうだい児育てへの支援 / 障害児家族への支援 |
研究実績の概要 |
2019年度は以下の研究を実施した。 1点目に、昨年度に引き続き「きょうだい児を育てる親へのアンケート」の障害種別分析を行った。北海道・北陸・関東・近畿・中国地域から得られた有効回答674のうち、自閉症スペクトラム障害児のきょうだい児を育てる親(以下、ASD群)213と、重度・重複障害児のきょうだい児を育てる親(以下、SMID群)246とのきょうだい児育成上の悩みの有無を比較したところ、ASD群159(74.6%)、SMID群187(76.0%)が「悩み有」と回答し、双方とも高率であった。きょうだい児の年齢別比較では、両群ともきょうだい児の年齢が低いほど悩む親が多い傾向が示された。悩みの内容で両群とも上位を占めたのは、「同胞に関連したきょうだい児へのいじめ」「不満や不公平感への対応」「親なき後の相談」であった。しかし、ASD群では、「きょうだい児と同胞とのトラブルへの対応」「同胞への嫌悪感」 「きょうだい児への同胞の障害の説明」がSMID群より高率であり、一方、「同胞の世話のために時間を取られるきょうだい児に自身の時間を確保してやること」はSMID群が高かった。このことから、各群は、同胞の障害特性に関連して、きょうだい児への対応に悩んでいることが示された。 2点目に、昨年度末実施した、きょうだい児育成支援プログラムについて、効果検証を行った。16名の自由意思による参加者(いずれも母親)に対し、1回2時間、全6回からなるプログラムを開発し、1か月に1回のペースで実施した。第1回開始前と最終回終了後に、アンケートによるきょうだい児育てが「うまくいっている」程度に関する主観的評価を行ったところ、Post時点で統計的に有意な差をもって、平均値が増加したことが確認された(p<.05)。そこで、本年度は新規希望者を募り、7名の母親に対し、プログラムを実践した。現在は結果を分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は「きょうだい児を育てる親へのアンケート」について、重度・重複障害児のきょうだい児を育てる親(SMID群)と自閉症スペクトラム障害児のきょうだい児を育てる親(ASD群)の比較分析を終え、学会等で発表することができた。特に、International Association for the Scientific Study of Intellectual and Developmental Disabilities(IASSIDD)の4年に1度開催される国際大会で、研究成果をポスター発表したところ、内容が優秀であるとして、学会本部より表彰を受けた。現在は、次段階として、知的障害児のきょうだい児を育てる親(ID群)、知的障害を併発する自閉症スペクトラム障害児のきょうだい児を育てる親(ASD&ID群)とASD群との比較分析に取りかかっている。 さらに、2019年度は、本研究で開発してきた親を対象とした「きょうだい児育成支援プログラム」について、2回の実践による検証を終了し、その結果分析に入ることができた。現段階では、引き続き、親子関係に及ぼす効果について分析を続けている。 上記の研究成果については、2020年度の学会での発表を目指している。 一方で、年度末に参加者に対するフォローアップセッションを実施し、フォローアップデータの取集と研究成果のフィードバックを行う予定であったが、関係機関との調整が難しく、実施できなかった。そのため、当初計画していた研究全体の総括及び関係者への報告にまで至ることができなかった。現時点では、フォローアップセッションを2020年に延期して実施する予定であるが、昨今の状況次第では断念せざるを得ない可能性も出てきている。その場合は、オンラインによるディスカッション、紙面報告などの方法を検討しなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究データをまとめ、その成果を検証し、地域社会に還元することを中心に研究を進める。 1点目に、これまで分析を続けてきた「きょうだい児を育てる親へのアンケート」結果について、残された肢体不自由、及びその他の身体障害のある子どものきょうだい児を育てる親の悩みを分析し、全障害種別の分析を行う。併せて、きょうだい児を育てる親がとらえた、家族QOLの現状について分析し、きょうだい児を育てることと、家族QOLとの関連について検討する。これにより、障害のある人の家族支援のあり方を、きょうだいを含め、家族全体のQOLという視点から検討するとした、本研究の目的に迫るものとする。 2点目に、延期となっていた「きょうだい児育成支援プログラム」のフォローアップセッションを実施し、併せて、研究協力者及び関係者に対し、得られた研究成果に関する報告を行う。 また、「きょうだい児を育てる親へのアンケート」調査、及び、「きょうだい児育成支援プログラム」の開発実践から得られた成果をまとめて、国内外の学会で発表するとともに、論文化を図る。もし、新型コロナウイルス感染症の状況により、上記の対面型のセッションや、研究発表が難しい場合には、紙面あるいは、オンラインにより、関係者に公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に参加者に対するフォローアップセッションを実施し、フォローアップデータの取集と研究成果のフィードバックを行う予定であったが、関係機関との調整に時間がかかり、その後の新型コロナウイルス感染症の拡大も相まって、実施できなかった。よって、その開催にかかる費用(講師謝金、スタッフ謝金、資料印刷費等その他の諸経費)が持ち越しとなった。 また、上記に関連して、本研究の最終成果分析とその発表ができなかったので、それに関連した、テータ分析用経費、資料作成費、学会参加費等が未使用となった。 次年度は、最終結果をまとめて公表する段階として、上記の延期となった研究活動を実施する予定である。助成金未使用額はそのために使用する。
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