研究課題/領域番号 |
16K04803
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
阿部 美穂子 山梨県立大学, 看護学部, 教授 (70515907)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 害児のきょうだい支援 / 障害児の家族QOL / 障害児家族への支援 |
研究実績の概要 |
2020年度は、北海道・北陸・関東・近畿・中国地域で行った「きょうだい児を育てる親へのアンケート」659の有効回答について、分析障害種を拡大し、きょうだい児育ての悩みの最終分析を行い、以下のことが示された。 1;有効回答中、88.5%の親がきょうだい児育てに悩んでいることが示された。2;同胞の障害種について、単一身体障害=PD、重度・重複障害=SMID、知的障害=ID、発達障害=DDの4群、及び、きょうだい児の年齢について、幼、小、中高、成人の4群を独立変数として比較したところ、低年齢きょうだい児を育てる親ほど悩むものが有意に多く、障害の重い子どものきょうだい児を育てる場合、特にその傾向が顕著であった。3;悩み内容の選択率には、障害種別、及び年齢別による有意差が見られ、若い親は子育て経験が浅い状況で、障害のある子どもときょうだい児の子育ての両立という難しい局面で苦慮しており、特に意思疎通や理解が難しいSMIDやIDのある子どもと、きょうだい児の子育ての両立は、より多くの悩みを引き起こすこととなると推測された。4;どの障害種においても、きょうだい児と周囲との関係性への懸念が共通して悩みの上位を占めた。一方、親が学びたいと願う内容は、各群とも親なき後に関するきょうだい児との協議方法であり、きょうだい児の現状よりも将来の安心に関心がある親の思いが明らかとなった。 以上を踏まえ、きょうだい児を育てる親支援プログラムの方向性においては、以下が示唆された。1;低年齢のきょうだい児を育てる場合に、より実施ニーズが高い。2;同胞の障害種ときょうだい児のライフステージに応じた、現実的な子育て支援の内容を含める。3;親自身のメンタルヘルスや家族観のパラダイムシフトを促す内容を含める。4;きょうだい児の主体的選択と決定力を育て、充実した生き方を支える視点から子育てに取り組む土台作りをする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は「きょうだい児を育てる親へのアンケート」について、きょうだい児育てに関する悩みの最終分析を終えることができた。その内容について、国内の学会を中心に発表を実施するとともに、研究論文にまとめて発信することができた。また、昨年度までに実施した実践研究の結果をまとめて、International Association for the Scientific Study of Intellectual and Developmental Disabilities(IASSIDD)のアジア地域国際大会(インド)で、研究成果をポスター発表する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、学会が中止となり、断念せざるを得なかった。そこで、関連する成果については、次年度に延期し、別途発表の場を模索する予定である。 一方で、昨年度末に断念した参加者に対するフォローアップセッションを実施し、研究成果のフィードバックを本年度行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症のさらなる激化により、そのめどが全く立たなくなった。そこで、関係者には、オンライン上に掲載した論文をもって、研究成果報告を行うにとどまっている。次年度は最終年度であり、何らかの形で実施したいと希望しているが、難しい事態となった場合は、改めて、その場合は、再度、オンラインによるディスカッション、紙面報告などの方法をとるしかないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度に引き続き、これまでの研究データをまとめ、その成果を検証し、地域社会に還元することを中心に研究を進める。 1点目に、これまで分析を続けてきた「きょうだい児を育てる親へのアンケート」結果から、今度は、きょうだい児を育てる親がとらえた、家族QOLの現状について分析を加える。その後、2020年度の成果と合わせ、障害のある人のきょうだいへの支援について、家族QOL支援の視点から明らかにする。 2点目に、延期となっていた「きょうだい児育成支援プログラム」の報告及び、フォローアップセッションを対面、あるいはオンラインなど、可能な方法を模索して実施し、研究協力者及び関係者に対し、得られた研究成果に関する報告を行う。 3点目に、成果をまとめて、国内学会で発表するとともに、論文化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大により、予定していた国際学会が中止となり、そのための旅費・及び参加費に余剰が生じた。加えて、予定していた、昨年度延期した、実践参加者への報告及びフォローアップ活動も実施のめどが立たず、そのために用意していた予算も繰り越しとなった。 次年度の使用額については、最終年度であり、その額も20万程度であることから、今後の新型コロナウイルス感染症の流行状況を鑑み、国際学会での発表は諦め、国内の学会を中心に成果を発表するために使用する。併せて、実践参加者への報告及びフォローアップ活動を、対面、オンライン等の方法で柔軟に検討し、成果の還元のために使用する。
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