研究課題/領域番号 |
16K04812
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 昌子 筑波大学, 人間系, 准教授 (70412327)
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研究分担者 |
小林 宏明 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50334024)
酒井 奈緒美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 感覚機能系障害研究部, 研究員 (60415362)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 吃音 / 発達障害 / 非流暢性 / クラタリング / 重複 |
研究実績の概要 |
まず,①発達障害を重複する吃音の出現率を明らかにする,という目的での研究に着手している。現在のところ,7名の言語障害通級指導教室担当教師からの回答を得た。その結果,吃音を主訴として通う39名の児童のうち,教師が発達障害等他の問題の重複を疑っている者が18名(46.2%)存在することが明らかになった。この結果はBlood, Ridenour Jr, Qualls, and Hammer (2003)の62.8%を下回るが,吃音を主訴とする者の約半数が重複する他の問題を併せ有することを示唆するものとなった。現状ではサンプル数が39名分と少なく,今後は約100名程度のデータ収集を目指し,調査を続ける予定である。 次に,②吃音のある児童で発達障害の疑いがある者の追跡を行うことで,吃音や発達障害の変化を観察し,症状変化による類型化のモデルを提示するという目的についても着手している。こちらは,研究分担者と共同で,現在までに6名の事例を追跡した。その結果,年齢上昇と共に吃音症状が消失に向かう者,向かわない者に分かれること,向かわない者の中に,早口言語症(クラタリング)が顕在化する者がみられることが明らかになった。これらの事例を整理し,症状の変化に応じた類型化のモデルを作成する。 ①と②を踏まえ,発達障害は吃音慢性化のリスク要因となり得るのかどうかについて検証したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の二番目の課題である,②吃音のある児童で発達障害の疑いがある者の追跡を行うこと,について,当初は3歳時検診での観察を予定した。実際に検診会場で予備的な調査を実施したところ,3歳時検診では,子どもが幼く言語反応も少ないため情報が得られにくいこと,様々な行動特徴を示す者がみられたが,それが発達障害の兆候であるのか,年齢相応な行動なのかの判別がつきにくいことが分かった。よって,この年齢からの追跡を行うことを基本的には中止した。吃音を主訴としてインテークした時期からの追跡ということで,中には3・4歳から追跡できた児童も含まれるが,直接観察する時期は学齢期が中心となった。
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今後の研究の推進方策 |
まず,①発達障害を重複する吃音の出現率を明らかにする,という目的での研究現状ではサンプル数が39名分と少なく,今後は約100名程度のデータ収集を目指し,調査を続ける予定である。 次に,②吃音のある児童で発達障害の疑いがある者の追跡を行うことで現在までに6名の事例を追跡した。さらに4名を追加し,追跡を行う予定である。 ①と②を踏まえ,発達障害は吃音慢性化のリスク要因となり得るのかどうかについて検証したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
保健センターで実施する予定の調査をとりやめたため,使用額が一部減少した。その代わりに,小学校内や小学校内通級指導教室の教師に向けたアンケート調査を行った。今年もこの調査を引き続き行う。さらに,通常学級の担任を対象とした調査を追加して実施する予定である。この調査での印刷代,郵送代,などを計上し,使用する予定である。
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