研究課題
吃音には様々な障害が重複することが報告され(Bloodら,2003),効果的な支援法が検討され始めている。特に欧米の調査では吃音の4~26%がADHD等の発達障害と重複し,障害特性に合った介入が求められると報告されるが,日本では実態が明らかにされず具体的な支援方法は模索の段階である。本研究では,発達障害を重複する吃音の出現率を明らかにする,吃音症状と発達障害の特徴の変化に基づいた群分けを行うことを目的とし,発達障害が重複する吃音のある子どもの実態調査を行うこととした。関東地方の言語障害通級指導教室(東京都75,埼玉4,神奈川1教室)に教員用と保護者用の質問紙を送付した。教員用の質問紙には「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(文部科学省,2012)」で用いられた「学習面」と「行動面」に関する児童生徒の困難な状況について尋ねる計75項目,児童の概要に関して尋ねる5項目が含まれた。保護者に対しては児童の発達について5項目の回答を求めた。28教室の教員93名,保護者94名からの回答が得られた。教員が担当する吃音を主訴とした児童の総数は330名,うち吃音以外の問題を重複すると回答された児童は137名(41.5%),質問紙を実施した結果,発達障害の重複が推測される児童は35/100名(35.0%)であった。保護者から回答が得られた94名中,発達障害の医学的診断歴のある者は13名(13.8%)であった。通常学級の児童生徒を対象にした調査結果(学習面 又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は推定値6.5%)(文部科学省,2012)と比較し,本研究での結果は35.0%と明らかに高い傾向がみられた。現段階ではサンプル数が少ないが吃音のある児童の中に発達障害の重複が疑われる児童が3~4割程度存在する可能性が示された。
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音声言語医学
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https://doi.org/10.5112/jjlp.60.30
児童心理
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