本年度は、最終年度となり、主に以下のような研究を行った。①青年期発達障害者を対象として自尊感情とwell-beingに関する3か年にわたる縦断研究の調査研究を実施した。3か年にわたる追跡調査が可能であった事例は少数であったが、発達的変化について検討することができた。②青年期発達障害者を対象とした自尊感情とwell-beingに関する調査研究を、より大規模に実施し、主にはASDのwell-beignと自尊感情、所属機関、他障害の合併の有無による違いなどについて検討した。その結果、well-beingと自尊感情の関係の強さが改めて示唆された。また,特別支援学級の経験や他診断の合併との関係は,弱いことが示唆された。③青年期発達障害者を対象としたwell-being、自尊感情を高めるための支援プログラムの開発を試み、プログラムを実施し、その効果を検証した。プログラムに参加したのは、主にASDの青年であった。その効果を自尊感情やwell-being、自己理解などの観点から事例的に事前・事後で比較検討を行った。また、事後調査時にプログラムに対する評価についても、アンケート調査により検討した。その結果、自尊感情やwell-beingに関する変化はみられなかったが、事後調査から他者とかかわりながら活動に取り組むことによって、自己理解が深まったことや当事者はプログラムは役に立ったと実感していることが明らかとなった。したがって,短期的なプログラムでの自尊感情やwell-beingの向上は難しかったが,他者とかかわりながら取り組む活動内容が自己理解の深化につながることが示唆された。なお、研究成果については報告書を作成するとともに,国際学会や国内学会でポスター発表,自主シンポジウムにて発表、LD研究(学術雑誌)にも掲載した。さらに、今後も研究成果は英文誌などへの投稿も含めて行っていく予定である。
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