研究課題/領域番号 |
16K04815
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柿澤 敏文 筑波大学, 人間系, 教授 (80211837)
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研究分担者 |
鈴木 麻央 つくば国際短期大学, 保育科, 助教 (30748603) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 弱視 / ICT / 読書 / 視覚特性 / 文字提示方法 / スクロール提示 / 高速継時提示 |
研究実績の概要 |
全国視覚特別支援学校ならびに弱視特別支援学級(通級指導教室を含む)に在籍する児童生徒を対象として、ICT機器等の使用状況に関する調査を実施した。その結果、視覚特別支援学校在籍者の279名(9.5%)、弱視特別支援学級在籍者の119名(37.8%)がICT機器を使用している実態が把握できた。ICT機器は、近用ルーペや遠用単眼鏡とともに、弱視児童生徒が保有視力を有効に利用するための補助機器として利用されつつあることがわかった。これらの結果を報告書にまとめて刊行した。さらに、日本特殊教育学会第54回大会にてポスター発表を行うとともに、インドネシアで開催されたInternational Conference on Special Educational Needs、ならびにDialog Nasional Pendidikanにて、日本の状況報告として口頭発表した。 実証的検討として、弱視児童生徒の視覚特性とICT画面に提示される文字情報の特性(文字サイズやコントラスト、提示方法(スクロール提示、高速継時提示)等)が読速度に及ぼす影響を検討するための予備的検討として、スクロール提示について弱視者3名を、高速継時提示について弱視者12名をそれぞれ対象者として測定を行った。その結果、スクロール提示においては文字サイズの増加とともに提示速度の減少が認められ、読速度の低下が生じることが分かった。一方、高速継時提示では、意味単位や文節単位での読みが生じると予想したが、いずれの弱視者においても一文字読みの方略を採る様子が確認され、高速継時提示が必ずしも弱視者において有効でないことが把握できた。一方、有効なICT選定に資する保有視力のアセスメントについても検討した。今後、これらの結果について、視覚特性との関連を確認した上で、本実験を実施する。 併せて、理論的検討として、関連和文文献の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査的ならびに実証的検討として、データ収集を行い、結果について学会発表のほか、報告書にまとめ発行した。なお、実証的検討にて使用する、ICT画面への文字提示方法について、有効なアプリケーションの作成を検討し、既成のアプリでの応用を確認した結果、有効なアプリを作成することができた。さらに理論的検討を加えるための資料収集も予定通り進行している。 研究実績について、以下の通り発表等を行った。会議発表 口頭発表(招待・特別) Inclusive Society in Japan 柿澤, 敏文 International Conference on Special Educational Needs/2016-12-02--2016-12-02 2016。会議発表 口頭発表(招待・特別) Inclusive Education in Japan 柿澤, 敏文 Dialog Nasional Pendidikan/2016-11-21--2016-11-21 2016。会議発表 ポスター 弱視者を対象とした近距離の小数視力とlogMAR値の比較 黄, 柏翰; 柿澤, 敏文 日本特殊教育学会第54回大会/2016-09-17--2016-09-19。 会議発表 ポスター 2015年全国視覚特別支援学校児童生徒の視覚障害原因等調査 柿澤 敏文; 鈴木麻央; Hisham, Elser Bilal Salih; 黄柏翰 日本特殊教育学会第54回大会/2016-09-17--2016-09-19。著書 全国視覚特別支援学校及び小・中学校弱視学級児童生徒の視覚障害原因等に関する調査研究 -2015年度調査- 報告書 柿澤敏文 2016-09。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に則り、弱視対象者への本実験を遂行する。小学部、中学部、高等部など、年齢群を設けて検討を行うとともに、発達的な視点からの分析も実施する。 理論的検討について、和文以外の文献収集を今後進め、新しい知見の確認・収集を行う。 研究成果について、国際ロービジョン学会のほか、日本特殊教育学会、障害科学学会、日本弱視研究会等において口頭発表・ポスター発表のほか、雑誌論文を執筆・投稿し、広く研究内容について公表するとともに、今後の方向性について有識者より意見を頂き、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度収集したデータの保存・分析に使用するとともに、次年度早々に使用する予定の物品の購入を年度末に行った。予算執行が遅れた結果、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに当該予算は次年度開始直後に執行済みであることから、使用計画に変更はない。
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