研究実績の概要 |
弱視幼児児童生徒(以下、弱視生徒)の視覚補助具として、従来の近用弱視レンズ(ルーペ)や遠用弱視レンズ(単眼鏡)、拡大読書器等のほかに、汎用性のあるタブレット端末等の機器(以下、ICT)を活用する新たな可能性が探られている(川嶋ら,2012:弱視教育50(1),1-7)。これらのICTは、弱視生徒の学習支援において、理解しやすくて疲労の少ない教材・教具を手軽に提供できる可能性をもつが、その使用頻度に関するデータは少ない。そこで、全国の視覚特別支援学校(以下、盲学校)67校(国立1、公立65、私立1)に在籍する弱視生徒を対象として調査を実施した。なお、本研究は筑波大学人間系研究倫理委員会の承認(筑27-16)を得て、参加者に不利益が無いよう万全の注意を払って行われた。 調査項目は、各幼児児童生徒の在籍学部、使用文字、視覚補助具であり、各属性の人数について、比較・検討した。本調査で回答が得られた総数は2,951名分であった。そのうち、視覚補助具使用者は1,409名(総数の47.8%)であり、ICT使用者は279名(同9.5%)であった。視覚補助具使用者の5人に1人はICT使用の実態が把握できた。一方で、ICTのみ使用するものは少なく(45名,ICT使用者の16.1%)、2種類以上の視覚補助具使用のうちの1つがICTであることが多くを占めた(234名,83.9%)。使用文字別のICT使用者は普通文字(拡大教科書)が最も多く236名であり、次いで普通文字(通常の教科書)の33名、点字使用者の30名、併用(主に拡大・普通文字)者9名、併用(主に点字)・音声録音教材・文字指導困難がそれぞれ5名ずつであり、弱視生徒の割合が高かった。
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