本研究の目的は小中学生に対して「読み時間と誤読数」に加えて「読み上げ場所と注視場所の関連」「眼球運動量の大きさや滑らかさ」「理解度」の4要素を組み合わせて、読みの行動を数量的・客観的に明らかにし、指導に役立てることである。調査対象学年は、読みの能力差が顕著になる小学校3年生とし、宇都宮大学教職大学院において計測用文章の作成と理解度調査用の設問を作成した。その際、使用する漢字は2年生までのものとし、文章の難易度は平易なものにした。理解度調査用の設問は5問準備し、解答方式は選択式(3択)とした。文章・設問は初見でも十分理解できるものとした。 平成29年度までは被験者毎の分析・評価が中心であった。平成30年度は個々のデータを集約した分析・評価を実施した。別途実施された「学力調査」によって明らかとなっている国語の部分評価値との関連を分析した。 その結果、本調査による評価値が低い場合、本人の努力に依存しない問題が存在すると思われる。本システムによって得られる客観的な評価値により、特別の指導を必要とする児童を発見することができる。読み能力の高い児童の音読時の視線は、音読位置よりも先にある場合や戻ったりする場合など様々なパターンを示すことが分かった。一方、読み能力が高くない児童の場合、音読時の視線位置と読み上げ場所がほぼ一致する傾向を客観的に捉えることができた。 これらの研究結果は「電子通信情報学会 教育工学研究会(ET)」および「Hawaii International Conference on EDUCATION」「LD学会」などで発表した。
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