本研究は、視覚障害のある学生の学びを保障するためには適切な合理的配慮の提供が不可欠であり、その実現には多機関連携型支援の充実や支援技術の向上等が深く関わっているとの視点に立ち、主に文献資料の分析と各方面の実態調査を行ってきた。 2019年度の主な研究は、現役の視覚障害学生(点字またはスクリーンリーダーを使用)に対するインタビュー調査であった。従来の個別調査に加えて、小グループによるフリートーク形式のインタビュー調査を採用した。 本調査により、(1)点訳については、外部のボランティア団体の貢献が引き続き大きい、(2)点字プリンタ等、高額の支援機器の整備状況には大学間の差が大きく、苦慮している学生が存在する、(3)スマートホン等、画面読み上げ技術の進歩により、情報へのアクセスや発信が容易になった一方で、大学が提供するポータルサイトや学習支援ツール等にはアクセシビリティの課題が多い、(4)学生の学びの充実度は、大学による支援コーディネート、授業担当者の理解と協力、日常的な学習支援者(チューター)の存在、支援ソフトや支援機器の理解者(指導者)の有無等に影響を受けている、等が明らかになった。 今回の調査では、視覚障害のある学生同士が共感し合ったり、情報共有を始めたりといった場面が多く見られた。視覚障害学生の数は非常に少なく、一大学における支援ノウハウの継承は困難であるため、大学を超えた学生支援のネットワーク構築が有効であると推察された。今後は、その具体的方法について検討が必要である。
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