本研究は発達障害学生がその障害特性から就労に対して多くの困難を抱えているという事実から,大学から社会へ移行する間の支援プロセスに着目し発達障害学生自らが「自分の特性を理解し,他者に説明し,自分が必要とする支援を他者に求めていく行動を起こせる力」,すなわち,セルフ・アドボカシー・スキル (SAS)の獲得およびその際の支援者の支援方法について実証的な研究を行うことを目的としている。 平成30年度は研究補助期間の最終年度を迎え、これまで2年間で取り組んできた研究の成果と課題を整理した。具体的には、補助期間2年目に就職支援室の協力を得て実施した「仕事チャレンジ」や「学内インターンシップ」から、SAS育成の成果や課題について分析した結果、予め支援を受けられる環境が準備されている場合には,障害受容を含む自己理解や障害特性に合った仕事理解を高めることは比較的容易であることが明らかになった。その一方で,支援体制が十分整っていない企業のインターンシップ等では,高い能力や専門スキルがあったとしても,社会性や共感性を高めることが可能かどうかは企業実習等に参加した発達障害学生の結果から未知数であることが明らかになった。したがって、単発の就労体験を行って課題を見つけたとしても,それを乗り越えて就労にたどりつくことは,かなり難しいことが実践を通して明確になってきた。この課題を解決するためには,体験とフィードバックの連続的な支援と,実際の職場とのジョブマッチングをする支援を包括的かつ継続的に実施できる環境が必要であるという考えに至り、最終年度は学外の就労移行事業所の実態調査を実施し,支援機能の相互理解や役割分担について意見交換を行い,今後,相互にどのような形で連携・協力関係を築いていけるのか、その可能性について調査を実施した。その結果、発達障害学生の就労支援に関する連携の可能性を見出すことができた。
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