研究課題/領域番号 |
16K04838
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
田中 敦士 琉球大学, 教育学部, 准教授 (40347125)
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研究分担者 |
奥住 秀之 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70280774)
韓 昌完 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90599622)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特別支援教育支援員 / IE-SAT / インクルーシブ教育 / 評価尺度 / 質問紙調査 / 悉皆調査 / 学校 / 特別支援教育コーディネーター |
研究実績の概要 |
特別支援教育支援員に関しては学校教育法上の規定がなく、地方の一般財源である地方交付税の積算に含まれることから、支援員の配置・活用は都道府県・市町村の各自治体の裁量に委ねられている。そのため、自治体によっては他の事業に流用されていることもある。 国から財政措置された予算を活用できない背景には、各自治体の議会で配置効果をきちんと説明できていない可能性が議会議事録等からも伺える。そもそも国の財政措置も非常に少ないレベルにある。2014年度の全国の公立学校数は、幼稚園4,714校、小学校20,558校、中学校9,707校、高等学校3,628校の計38,607校(文部科学省, 2014)であり、1校あたりの平均配置人数は1.29名に過ぎない。 予算が少ないとは言いつつも、支援員を配置するために毎年500億円以上の地方財政措置がされているにもかかわらず、科学的な効果検証はこれまで国レベルどころか研究者レベルにおいても何らされていない。これは支援員を配置したことによる教育効果を測定する尺度が未だ開発されていないことに起因すると考えられた。 本研究では、学校現場で容易に評価が可能な「特別支援教育支援員配置によるインクルーシブ教育推進成果評価尺度(Inclusive Education Support Assessment Tool;IE-SAT)」を開発し、信頼性と妥当性の検証をすることを目的とした。研究初年度は沖縄県内の幼稚園、小学校、中学校、高等学校の特別支援教育支援員、および特別支援教育コーディネーターに対し、IE-SATを含む質問紙調査を実施した。申請段階においては、幼稚園、小学校、中学校については、人口規模やへき地等級にも配慮し沖縄県教育委員会と相談のうえ10市町村程度を抽出する予定であったが、沖縄県内のすべての幼稚園、小学校、中学校、高等学校に拡大して悉皆調査とすることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請段階においては、幼稚園、小学校、中学校については、人口規模やへき地等級にも配慮して沖縄県教育委員会と相談のうえ10市町村程度を抽出する予定であったが、沖縄県内のすべての幼稚園、小学校、中学校、高等学校に拡大して悉皆調査とすることとした。学校によっては校内連携が不十分で、特別支援教育コーディネーターが機能していなかったり、特別支援教育支援員の管理がうまくできていないなどの状況もあり、そのためか一部の学校では提出期限を大幅に超えて届き、2017年3月にも届いた例があった。したがって年度末まで到着した回答をすべて分析対象とするため、信頼性妥当性の分析等は現時点で作業中であるものの、第2年度目の調査は予定通り実施可能な状況であり、おおむね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は全国での実態調査をまず郵送法により実施し、標準化への協力自治体を募集する。対象は市町村教育委員会が設置されている全国1819市町村(平成25年5月1日現在:教育行政調査)から5~10%無作為抽出で91~182市町村とする。都道府県教育委員会については全数の47都道府県とする。市町村教育委員会については幼稚園、小学校、中学校の支援員配置事業担当者を、都道府県教育委員会については高等学校の支援員配置事業担当者を対象とする。調査内容は①支援員の配置効果の評価法、②効果を示すエビデンス、③支援員配置基準、④採用時における支援員の専門性基準、⑤採用後の研修内容、⑥IE-SATに対するニーズ等を問う内容である。 標準化への協力自治体に応募した市町村・都道府県担当者に対し、訪問説明し同意を得た上で、当該都道府県内の公立学校にIE-SATを実施する。多数の応募があった場合には、10自治体または対象の公立学校累計が500校を超えた時点で打ち切りとする。標準化への協力に応募した自治体のメリットは、配置効果に係るデータ入力、分析、報告をすべて大学側で行い、詳細な報告書が提供されることである。以上により、IE-SATを標準化し、ホームページ等で無料公開し、全国への普及を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に経費を使い切れなかったのは、分担研究者の奥住秀之教授(東京学芸大学)のみであった。1年目については、「特別支援教育支援員配置によるインクルーシブ教育推進成果評価尺度の標準化」の研究を進めるにあたり、担当した研究領域はおおむね予定通りに進んでいる。しかし、出張が必要な資料収集などがなかったこと、研究代表者との研究打ち合わせをメールや電話で済ませたられたこと、研究代表者が上京した際に打ち合わせを行えたことなどから、経費の執行が予定よりも少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目は、「特別支援教育支援員配置によるインクルーシブ教育推進成果評価尺度の標準化」の実質的な共同研究を更に推進するために、研究代表者との研究打ち合わせとデータ解析のための出張旅費(琉球大学)、データ収集のための出張旅費、データ解析補助のための謝金(専門知識のある複数の大学院生を予定)、研究に必要なデータファイル等の消耗品などで執行する予定である。
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