研究課題/領域番号 |
16K04840
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
八木 淳子 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80636035)
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研究分担者 |
桝屋 二郎 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70349504)
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 発達障害 / 早期発見・早期支援 / 母子メンタルヘルス / 行動障害 |
研究実績の概要 |
岩手・宮城・福島3県の震災被害の激しかった地域における43箇所の保育園から研究協力が得られ、文書と口頭での説明により研究に参加する親子をリクルートした。岩手92組、宮城71組、福島62組、計225組の研究参加同意が得られ、平成29年3月までにベースライン調査(アンケート調査+面接調査)を実施し、220組の回答が得られた。子どもの発達検査の結果の概要については、調査当日に実施担当者(臨床心理士)から保護者にフィードバックした。参加者が属する保育園の保育士にもアンケートを実施し、参加児の発達やメンタルヘルス、被災状況、家庭環境などについて、包括的な視点からのデータを得た。面接調査に際し、保護者や保育士から子どもの発達や育児についての相談が寄せられた場合には、児童精神科医か臨床心理士が対応した。 ベースライン調査の結果の概要を各保育園にフィードバックし、児童精神科医による養育支援・養育指導を実施した。 ハイリスク児・ハイリスク家庭の選定基準(次の4つの項目の、いずれか2つ以上を満たす群をハイリスク(介入群)とする。 ①認知発達検査で、6点以下(未満ではなく)が3つ以上、②CBCLまたはTRFの総得点が臨床域、③親のMINI面接で引っかかる、④M-chat, SDQ(TDS)、その他気になる項目がある)を設け、各県ごとに、基準に従ってハイリスクの親子のフォローアップを実施し、必要に応じて地域の医療機関や療育機関などに紹介した。 調査の進捗状況やパイロット調査で得られた結果について、平成28年5月20-21日に宮城県仙台市において開催された第15回日本トラウマティックストレス学会でシンポジウムを企画し、発表した。 研究の進捗状況や各県の地域の現状を把握するため、分担者会議を2回、拡大班会議を1回開催し、情報を共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各県100組の親子をリクルートすることを目標として、岩手87組、宮城71組、福島62、計220組のデータを集積できた。また、ハイリスク児のスクリーニングに必要な基準の設定と、詳細なアセスメントによるハイリスク児の同定、対象児とその家族に対する治療的介入、対象児が通園する保育園の保育士らへのフィードバックとエンパワメントを着実に実施することができた。初年度のコホートの基盤づくりが概ね順調に成され、次年度の追跡調査実施の目処がたった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降においては、初年度の調査項目を適宜継続実施(追跡調査)することに加えて、子どもの年齢に合わせた、発達状況をより詳細かつ包括的に評価するために必要な心理発達検査の項目を追加実施する(WISC-Ⅳ予定)。保護者のメンタルヘルスの評価を丁寧に実施し、前年度との比較において、子どもの状態との関連性を評価する。ハイリスク児・保護者に対して、長期計画に基づき介入プログラムを実施し、保育士に対する後方支援の継続とその評価を行い、さらに必要な支援の在り方について検討する。 長期縦断研究としての基盤を強固なものにするため、研究対象の子どもとその保護者、保育士に対し研究の意義の啓発や進捗状況報告のための、ニュースレター等を発行し、ホームページや郵送で配布する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究班会議や事務消耗品費を節減しながら、おおむね計画通りに研究を遂行できたが、来年度予算も限られているため少しでも有効に使うために繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、初年度のベースライン調査を基に追跡調査を実施するため、引き続き調査に係る謝金、旅費等が発生する。加えて、保護者のメンタルヘルスの評価を丁寧に実施し、保育士に対する後方支援も継続して行い、さらに必要な支援の在り方について検討する予定で有ることから、研究対象の子どもとその保護者、保育士に対し、ホームページ等の双方向性ツールを活用し、研究の意義の啓発や進捗状況報告を行う予定である。その他の経費については極力、節減を目指す。
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