研究課題
本研究の重要性は、非行化した少年(多くは不適切な養育を受けてきた)らが、夫婦小舎制度を採用している児童自立支援施設に入所し、生活しつつ非行性を除去する中で、どのような心理的、行動的、神経学的変容を示すのかを検証することである。 本研究の目的は、「入所児童・少年」が疑似家族的な環境で学習し、生活し、また社会生活を営む上で、どのような改善を示すのかを検証することである。日本の矯正教育の効果検証研究としては極めてユニークかつ重要であると考えられる。対象施設との十分な連携および協力を基盤として、かつ対象少年とその保護者らへの十分な説明を実施した上で、以下のような調査を実施している。入所児童、少年らに対して、入所時と退所時に①CBCL(子どもの行動チェックリスト)②各心理尺度(自尊感情尺度、うつ尺度、解離得点など)③精神医学的構造面接(MINI-KID)④構造的MRI撮影このような評価を通して、子どもたちの施設入所期間中の、行動的、心理的、精神医学的、および神経学的変容を評価する。我々の仮説とは、「疑似家族的な環境で生活した子どもたちは、学習・運動・社会性・健康面において劇的な改善を示す」というものである。これらのことを検証するために、多くの質問紙や検査を実施し、この施設の矯正教育効果を検証する。 これまでにこのような多面的評価を用いた研究は見当たらず、またMRIを使用した、矯正教育効果評価研究も極めて稀である。よってこれらのことからも本研究の重要性が明瞭である。
2: おおむね順調に進展している
研究協力施設との協力態勢は万全であり、入所時および退所時の心理検査データは蓄積されている。また同意のとれた少年に対するMRI撮影のデータ収集も順調に進んでいる。今年の3月には、研究協力施設で職員研修を行った。その内容は、本研究データの中間報告であり、分析された結果の一部が報告された。職員間で特に注目されたのは、入所児童・少年は平均して約1年施設で生活するが、IQが平均して20上昇したことである。これについては相当数の対象児の分析から明瞭になっており、この施設の矯正教育効果を示すものとして注目される。当然ながら施設職員や、寮担当職員らも驚くと共に、自信を持たれたようであった。平成29年度には、この研究領域の研究者らと、ストックホルム犯罪学会でシンポジウムを実施する予定である。また国内学会でもシンポジウムを開催する予定であり、MRIの結果を含め、研究結果を還元していく。
今後は堅実に研究対象者の同意を得つつ、研究データを蓄積していく。また縦断的研究であることから、それらに応じた統計手法を用いつつ、多面的に評価する。得られたデータの分析を進め、論文発表や学会発表などを積極的に展開していく。
心理検査用具一式(K-ABC)を購入予定であったが、今年度は使用しないという施設側の要望があったため。
29年度はスウェーデンと米国での研究発表が予定されておりその旅費に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Psychiatry research. Neuroimaging
巻: 262 ページ: 1-7
10.1016/j.pscychresns.2017.01.010
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